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著者が江戸時代紀行の名作としてあげるのは、「奥の細道」(松尾芭蕉)、「木曽路紀」(貝原益軒)、「東西遊記」(橘南渓)、「陸奥日記」(小津久足)である。名作の条件として「豊かな情報」「前向きな旅人像」「正確で明快な表現」をあげている。
奥の細道に関して著者は、「作為に満ちて無理をしている不自然な作品」で、異色作としている。同時代の上田秋成も、芭蕉の文芸は中世的なものの完成者と断じている。つまり、江戸という近世の精神と隔絶して、古い中世に憧れたということかもしれない。
一方著者は小津久足に関して、「事実を正確に記し、旅の実用書として役に立つ」として、彼の再評価を促している。
本書は他にも多くの作家(林羅山、本居宣長、菅江真澄、古川古松軒、松浦武四郎)を取り上げている。
当時の人達が何ヶ月もかけて歩いて日本全国各地を訪れ、その様子を記したものが2,500点も残っていることに驚く。
当時の文と現代語訳が掲載されているので読みやすいし、当時の旅事情を知るという意味でも、とても面白く読めた。