「絵本の募集があるので、描いてみませんか」と言われて、久し振りに絵筆を持つことになった。何年か前に、子どもたちに絵本の読み聞かせをしていて、絵本も結構面白いなと思った。絵本を描くというよりも、「書く」方に興味が湧いて、サンタクロースに関する童話を書いたが、あれから何をすることなく過ごしてきてしまった。やってみようかと思ったが、いざ文章を読んで場面を思い浮かべ、下書きを描いてみるけれど筆は進まない。
絵を描くことから随分遠ざかっていたから、やっぱりスムーズに鉛筆が動かない。ああでもない、こうでもないと、何日間かやっているとちょっと気分が乗ってきた。人から声をかけられたりして中断すると、やはり集中力が途切れるので、まずは簡単に出来ることから初めて、緊張感を高めていく。昨日の夕方、訪ねて来た友だちが描きかけの作品を見つけて、「なかなかうまいもんだね」と褒めてくれた。「昔は教えていたんですから」と答えると、「ああ、そうでしたね」と恐縮していた。
この歳になっても褒められるのは嬉しいことで、そうか、もう少し頑張ろうという気になるから不思議だ。それでカミさんには出来るだけ家にいないようにしてもらい、せっせと絵筆を動かすことに集中する。すると、こんな時に限ってカミさんに電話が入る。アメリカに住むカミさんの大学時代の友人からで、写真を送ってもらったことへのお礼だった。写真を送ったのはカミさんではなく友人だったのだが、その送り主に電話をしてもつながらなかったからと言う。
彼女には随分お世話になった。長女は学生の時に1週間ほど、彼女の紹介でホームステイしたことがある。私はお礼に、千代紙と何冊かの折り紙を解説した本を送った。彼女はそれを見て研究し、折り紙の先生になったし、アメリカで本まで出している。彼女が我が家に来た時に初めて、生い立ちやなぜアメリカに行ったのかという話を聞いた。電話で話していたら、今月末からマサセッツ州の娘さんのところに行くと言う。娘さん夫婦が買ったという家の写真を見せてもらったけれど、家の周りは林で鹿が写っていた。自然のままにしておくのが州の規則だとも言っていた。
彼女の話では、今年はひどい乾燥が続き、山火事が絶えないそうだ。山火事の後で雨が降ると、濁流が押し寄せて来て家が流されるところもあると言う。彼女のアメリカでの生活は傍目で見ると幸せそうに見えたけれど、苦難の連続だったのかも知れない。私が彼女を見たのは大学1年の時だった。友だちがいた学生寮に行った時に、初めて出会った。出会ったといってもそれはただ遠くから眺めたに過ぎなかった。大人の女の人がいると思ったが、後から聞いたけれど、彼女は年上だった。まるでフランス映画に出てくるような大人の女の雰囲気があった。
そんな昔のことを思い出しながら、再び絵筆を握るがやはりなかなか進まない。今月末が応募の締め切りである。何とかそれまでに完成させなくてはと思って励んでいる。
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