本棚の奥で横積みになっていた雑誌があった。週刊朝日別冊の1995秋季号で、『小説TRIPPER』だった。「性と愛の小説特集」とあるが、長い間読まれることなく積読されていた。書店で購入したというより、どこかの古本屋で手に入れたものだろう。
雑誌の表紙を飾るのは、本に囲まれた仕事場のようなところに座る林真理子さんだった。雑誌にはインタビューを受ける林さんの記事が載っている。表紙の写真もインタビューの写真も随分若く見えると思ったら、1954年生まれだったから41歳である。
インタビューの中で彼女はこんなことを話していた。「結婚が作家としてマイナスだったと思うのは、建前として浮気をしてはいけないという足枷があるので、性的な仕入れができなくなったこと(笑)」。
「建前は建前として、もちろん恋愛願望はあります。人妻であろうと、恋愛したくない女性なんていないんじゃないですか。機会あればと夫にも宣言しているのですが」。「夫には誰と会って、どういう話をしたとか、何でも喋っているのですが、何人か喋れない男性をキープしておきたいと思うようになりました。ちょっと好意を寄せている男―そんな男性から電話がかかってくるとうれしくて」。
素直な人なのだと感心する。男性でも女性でも、いくつになっても恋するのは自然な感情である。日大の理事長となった今では、世間の目はいっそう厳しいだろうが、バレることなく密かに恋を楽しんでもらいたい。
「最後の恋」をするぞと言っていた先輩は、井戸掘りで知り合った若い主婦とラインで結ばれていて、「こんなの送ってくるんだ」と自慢気に画面を見せつけてくる。先輩も素直でいい、羨ましい限りだ。小説家志望だった中学からの友だちも、素直に小説を書いたらいいのにと思う。
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