目が覚めた時は、2対2であった。まさか日本が先に2点取っていたとは思わなかったので、このまま引き分けでもいいと思った。サッカーW杯のトーナメント戦、ベルギーとの試合は善戦だった。最後の最後になって、日本のシュートをキャッチしたベルギーのキーパーが前線に向かってボールを投げると、これを捕らえたベルギーの選手が怒涛のように日本のゴールに向かい、3点目を入れてしまった。万事休す。経験の差が点差となってしまった。
仕方ない。もう一度寝よう。朝のテレビは選手や監督の言葉を、街の声を、各国の報道を取り上げていた。こんなにも多くの人々が熱中するものなのか、幸せというか平和というか、凄いなと思う。カミさんは未だに咳が出て苦しそうだ。そういえば、先輩男性もまだ喉が痛むのか、声がしわがれている。小学校では運動場で、サッカーの試合が行われ、先生の指導も一段と熱が入っているように聞こえる。プールでは「キャー、キャー」高い声が飛び交っている。
この子たちが大人になる時は、世界はどんな風になっているのだろう。世界は確実に「豊か」になった。私が小学生の時は、電話のある家は数少なかった。テレビのある家も珍しかった。今、子どもでもスマホを持ち、操作している。麻生副首相が「新聞を読まない若い世代は、自民党支持している。新聞の購読者増に協力なんかしない方がいい」と放言しているが、確かにそんな傾向にある。
インターネットは新しい世界をつくった。誰でも発信者になれるし、真実も偽情報も平等に届く。ネットで仲間が出来るし、気に入らない事や人を匿名で攻撃できる。ベトナムを旅行していて、世界の異常気象はいずれ人類の危機になるだろうが、ひょっとすると、インターネットが人類を滅ぼすかも知れないという妄想に陥った。こんなにも幸せに満たされているのは、悪いことが始まる前兆なのかも知れない。ベトナム人もサッカーが好きで、「日本を応援している」とガイドさんは言っていた。彼も試合を観ていたのだろうか。