実務家弁護士の法解釈のギモン

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譲渡制限特約付債権の譲渡(4)

2018-06-06 14:01:02 | 債権総論
 大分横道にそれてしまったが、話しを譲渡制限特約付き債権に戻す。

 改正債権法における譲渡制限付き債権の譲受人からの催告の仕組みは、債務者に履行能力があることを当然の前提にしている規定である。なぜなら、ここでの催告の趣旨は、単にデッドロック状態を解消するための仕組みだからである。
 しかし、現実には債務者の支払能力に問題があって譲渡人に履行しない場合も機能してしまう仕組みとなっているはずである。支払能力の問題で履行しない場合あっても、履行遅滞に陥るのが悪いと言ってしまえばそれまでであるが、中には、一時的な手元不如意ということもあるはずである。履行期には資金が確保できなかったが、1ヶ月後には確実に確保できるという場合である。

 この場合でも、債務者の履行遅滞であることには変わりはなく、遅延損害金が発生し、あるいは契約上の債務であれば、催告解除に服するということは避けがたい。しかし、解除等による契約関係の解消がされない限りは、1ヶ月後に遅延損害金とともに元の債権者に支払えば、債務の本旨に従った履行となる。債権者側も、多少の遅れには目をつぶるということはいくらでもあると思う。

 ところが、この譲受人からの催告の仕組みは、多少の遅れには目をつぶるということを、譲受人として許さない仕組みとして使われてしまう可能性がある。しかし、譲渡制限を付する債務者側の利益の一つとして、過酷な取り立てをする者に債権が譲渡されることを防ぐ意味もあったのではなかったか。この債務者の利益は、債務者の手元不如意の時にこそ機能するはずである。
 このように考えると、譲受人からの催告の仕組みは、これでよかったかどうか、私は若干の疑問を持つようになった。

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