実務家弁護士の法解釈のギモン

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所有権留保の弁済による代位(3)

2018-03-07 14:37:47 | 債権総論
 5、6年前の判例がどのような事案でどのような判旨かというと、信販会社が自動車購入者の購入代金の立替払いをし、自動車購入者は、手数料を含めた立替金を、信販会社に分割払いするという内容であるが、自動車名義は販売会社に留保されており、信販会社の立替払いにより信販会社が所有権が移転し、立替金等の分割払いが完済するまで信販会社に所有権が留保されるという約定になっている事案である。ただし、信販会社が立替払いを実行した後も、自動車の登録名義は、販売会社のままとなっている事案である。その後自動車購入者が小規模個人再生手続開始決定を受けているが、状況は破産手続開始決定を受けたのと同じと考えてよい。
 このような事案で、判旨は、再生手続開始の時点で信販会社を所有者とする登録がされていない限り、販売会社を所有者とする登録がされていても、信販会社本件立替金等債権を担保するために本件三者契約に基づき留保した所有権を別除権として行使することは許されないとしたのである。しかも、ここでは民事再生法45条が参照されている。

 前回の判例は、一見すると、あたかも所有権留保は登記・登録無しには弁済による代位を再生債務者(破産の事案であれば破産管財人)に主張できないとも読めそうなのである。だからこそ、弁済による代位によって取得した留保所有権を、登録名義の移転なしに破産管財人に対抗できるという今回の判例には、意外感が伴うのである。

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