実務家弁護士の法解釈のギモン

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会社法改正要綱案-監査・監督委員会設置会社(2)

2012-08-06 09:53:50 | 会社法
 委員会設置会社制度は、ある意味では監査役、監査役会制度に対するアンチテーゼという側面もあったのではないだろうか。しかし、委員会設置会社では、三つの委員会を必ず設けなければならず、それぞれの委員会は3名以上の定員の過半数が社外取締役でなければならない。そして三つの委員会の同質化を避けるとすれば、社外取締役が5,6名は必要となってこよう。
 これは、私の想像であり、実体はよく分からないが、この多数の社外取締役の選任が必要となってくるという点に、委員会設置会社を選択しにくくさせる要因があるのではないだろうか。
 これに対し、今回の会社法改正要綱案の監査・監督委員会設置会社では、委員会はこの監査・監督委員会の一つだけであり、定員3名の過半数が社外取締役であればよいことになっているようなので、選任すべき社外取締役は最低2名で済む。しかも、すでに監査役会設置会社の場合、半数以上は社外監査役でなければならいので、この社外監査役をそのまま社外取締役にして監査・監督委員会設置会社に移行することは、それ程難しくはない。
 今回の会社法の改正原案の実質的根拠を調べたわけではないので何ともいえないが、監査・監督委員会設置会社という制度を設ける意味合いは、監査役を必要としない機関設計として選択しやすい機関設計の仕組みを構築するというねらいがあるのではないだろうか。
 そして、監査・監督委員会設置会社に関する改正要綱案を見ると、取締役会の権限は委員会設置会社によく似ているので、結局、監査・監督委員会設置会社とは、私には従来の監査役会設置会社と委員会設置会社とを足して2で割ったような仕組みに見える。

 こうした機関設計を新たに認めることに意味が全くないとはいわないし、比較法的にも監査役制度が分かりにくいという側面も全く分からないわけではない。しかし、監査・監督委員会設置会社という仕組みを設けたとしても、これを選択すれば企業不祥事が防げるというと、おそらく企業不祥事の防止にはほとんど役に立たないと思う。
 そうだとすると、今回の改正要綱案の監査・監督委員会設置会社の仕組みを新設する本当のねらいは、将来、上場会社における監査役制度の全面廃止を含みにしたものとなっているような気がするのだが……。
 私の考えすぎだろうか。

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