実務家弁護士の法解釈のギモン

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所有権留保の弁済による代位(4)

2018-03-14 10:02:27 | 債権総論
 今回の判例の判決理由の中で、前回の判例との違いが問題となっている。今回の判例は、前回の判例をどのように位置づけているのか。
 今回の判例は次のようにいう。
 前回の判例の事案は、「販売会社に留保された自動車の所有権について、売買代金残額相当の立替金債権に加えて手数料債権を担保するため、販売会社から代位によらずに移転を受け、これを留保する旨の合意がされたと解される場合に関するもの」であるというのである。つまり、留保所有権の法定代位の事案ではなく、任意譲渡の事案だというのである。
 そこで、前回の判例の判旨をもう一度よく読んでみると、確かに、「本件三者契約は、販売会社において留保していた所有権が代位により被上告人に移転することを確認したものではなく、被上告人が、本件立替金等債権を担保するために、販売会社から本件自動車の所有権の移転を受け、これを留保することを合意したものと解するのが相当」と言っている。

 実務家は、比較的判旨を素直に読む傾向があると思う。それは、実務は判例が支配する場だからである。
 そして、この2つの判例を素直に読むと、三者間契約の内容は、留保所有権の任意譲渡と解釈されないように、法定代位によって取得することを明確にした内容としておく必要を痛感させられる判例と、多くの実務家は読むのではないだろうか。ただし、法定代位構成だと、手数料債権部分は被保全債権とはならない可能性が出てくるであろう。

 もっとも、以上は、実務家である私の発想であり、学者がこの2判例をどう評価するかは、あずかり知らない。

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