実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

債権法改正と訴訟告知(3)

2015-01-07 11:34:52 | 債権総論
 ほかにもいくつか訴訟告知に関する特殊な規定が設けられている例があるが、さらに、債権法改正仮案の中で、詐害行為取消訴訟を提起した債権者から債務者に対する義務的訴訟告知の仕組みが新たに設けられるようである。

 この訴訟告知を理解するには、まず、大まかな詐害行為取消訴訟の改正の内容を説明する必要がある。
 従来、詐害行為取消権の効果は相対的だと言われ、取消の効果は取消権者たる債権者と受益者・転得者との間だけででしか生じないとされ、債務者には取消の効果は及ばないと言われてきた。そのため、訴訟当事者も債権者が原告、受益者・転得者が被告となるだけであり、債務者は訴訟当事者とはならないとされていた。
 これに対し、改正仮案では、詐害行為取消判決は債務者および全ての債権者にも及ぶものとされ、既判力の第三者への拡張が定められることになる。この趣旨は、関係者の間に詐害行為取消権の効果の絶対的効力を及ぼすことを意味しているようであり、相対効と解釈されていた現行法の修正部分のようである。
 ところが、詐害行為取消訴訟の被告は相変わらず受益者・転得者だけと明文を置き、債務者に被告適格は認めないようである(この点は、債務者も被告としていた中間試案とも異なる)。他方で、訴えを提起した債権者は債務者に対して訴訟告知をしなければならないとされるのである。

 結局のところ、取消判決の既判力が債務者にも及ぶにもかかわらず、訴訟当事者とはならないことから、債務者の手続保障の一環として、義務的訴訟告知の仕組みを設けて債務者に訴訟への対応をする機会を保障する意味を持っているようなのである。
 以上のように考えると、雰囲気は株主代表訴訟における提訴株主から会社への訴訟告知と制度趣旨は似ているようである。

コメントを投稿