実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

高プロの撤回

2018-05-30 09:29:52 | 時事
 先週の投稿に引き続き、高プロに関してもう一言。

 先日、高度プロフェッショナル(高プロ)制度による労働について、その撤回権を認める修正を加えた上で、働き方改革関連法案が衆議院の厚生労働委員会で可決がされた。衆議院本会議での採決は明日であろうか。
 
 この、撤回に関する修正条項の内容を、衆議院のホームページで確認することができた。が、その内容を見て、少々驚きを禁じ得なかった。
 マスコミ報道などでは、いかにも高プロでの労働が始まっても、その労働者の意思でいつでも撤回できるかの如くの報道に感じたが、修正案は、撤回に関する手続は高プロ導入の際の労使委員会の議決において定めることになっている。
 この規定ぶりだと、どのような場合にどのようにして撤回できるのかは、労使委員会において定めることになりそうである。そうすると、その定め方如何によっては、労働者の意思でいつでも撤回できるというわけではない可能性も十分にあり得ることになる。

 もちろん、高プロ導入に当たっての労使委員会での決議は5分の4以上の多数で行うべきこととされているので、労働者側委員がしっかりしていれば、当該労働者による無条件撤回を認めない限り賛成しないとすることで、撤回権を制限するような高プロ導入を阻止することはできるのであるが、それは、あくまでも労働者側委員がしっかりしているかどうかに係る。
 使用者側の言いなりになってしまう労働者委員であれば、撤回権も極めて制限的な内容で議決されてしまうこともあり得ると考えなければならないだろう。

 もともと、私は、労働者本人の撤回の意思も現実的な場面で表明できるかどうかが問題であり、撤回権だけで大丈夫かどうか疑問に思っていたが、この修正案では、それ以前の問題といえそうである。
 労使委員会に丸投げしすぎではないだろうか。

コメントを投稿