実務家弁護士の法解釈のギモン

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カード破産

2018-02-14 13:40:29 | 時事
 数日前の新聞記事で、昨年1年間の個人の自己破産の申立件数が、前年比6.4%増の6万8791件で、2年連続で増えたという記事を目にした。これがその記事である。
 その記事でも指摘されているように、ピーク時は1年間の個人の自己破産の件数は20万件を超えていたので、その頃から比較すれば、申立件数は3分の1から4分の1であるが、ここに来て再び増えているというのは、あまりよろしくない。
 自己破産の申立件数が大幅に減ったのは、いわゆる消費者ローンの総量規制が導入されたことが一つの要因である。貸金業者は、年収の3分の1を超える貸し付けをしてはいけないこととなったのである。
 ところが、私の目からすると、これには落とし穴があり、あくまでも総量規制がかかるのは、貸金業者による消費者ローンだけであり、銀行のカードローンにはこの規制は及ばないのである。
 新聞記事によると、銀行のカードローンの貸出残高が増え続けているようで、まさに、この落とし穴が顕在化してきたことが、自己破産増加の一因のようである。
 ここにきて、金融庁が銀行のカードローン業務に関する検査を行っているようであるが、銀行の貸出規制がない以上、この検査も、不良債権の調査の一環として行っているだけではないかと思われる。もしそうだとすると、金融検査の本来の目的が銀行の健全経営という側面にある以上、個人に対する過剰貸付に対する規制としてはあまり効果的な検査とはいえそうにない。
 個人破産を防ぐという意味では、消費者金融業者が貸し出すか銀行か貸し出すかで、たいした違いはない。総量規制を縦割り規制ではなく銀行も含めた包括的な規制にはできないのだろうか。

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