実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

高度プロフェッショナル制度の疑問(4)

2018-05-23 10:59:39 | 時事
 高プロ制度適用のハードルの高さは、ネット情報ではあまり問題とされていないが、実は手続規制にある。

 労使委員会が設置されなければならない。その労使委員会の5分の4以上の多数で対象業務や年収要件等の条件について決議をしなければならない。この労使委員会は、企画業務型裁量労働制を適用する場合の手続要件とほぼ同じもので、労使委員会の半数は、過半数で組織する労働組合または過半数代表労働者の指名で組織されなければならない。この労使委員会は、恒常的な組織でなければならないはずで、賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的として設置されなければならない。
 つまり、高プロ導入に当たっては、こうした労働条件に関する事項を調査審議しながら労使委員会で決議することが法律上は想定されている。しかも5分の4以上の多数決によらなければならないから、高プロ導入に当たって、労働者側委員が賛成する条件として高いハードルを設けることもできることになる。
 例えば、過量な業務量とはならなあいであろう程度の対象業務について、年収要件は必ず1500万円以上が支払われなければならないとか、必要な会議以外には業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする(これは、企画業務型裁量労働制に関する条文と同じような文言である)とか、高プロ導入に一定の期限を設けて、更新時には労使委員会での再協議が必要などのような条件を満たした場合にのみ賛成するという方針を示せば、相当程度高プロにおける労働条件保護になってくる。

 ある労働法の教科書では、伝統的に労働者保護規制は、内容規制であったが、徐々に手続規制に移行すべきであるかの如くに述べられているものがあり、労使委員会の決議を要する裁量労働制は、まさにその一つの例であるかの如くに説明されていたと思う。高プロでもこれと同じ手続規制を設けようということであろう。
 したがって、もし、しっかりとした労働組合のある企業であれば、高プロ導入の条件を労働組合としてそれなりの条件を決めてしまえば、使用者側の判断だけで簡単に導入できるわけではないのである。この法律の理想を厳格に適用すれば、高プロ導入のハードルは、結構高いはずである。

コメントを投稿