実務家弁護士の法解釈のギモン

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経営陣VS創業家(4)

2017-10-24 11:09:55 | 時事
 会社側は、新株発行の必要性について、創業家の持株比率の希釈化とは無関係を装っており、裁判所も、差止請求の仮処分を認めなかった。
 しかし、私には、どうしてもこの時期での新株発行は禁じ手のようにしか映らなかった。経営陣と創業家の対立がある中での新株発行は、持株比率の希釈化と無縁とは思えないからである。マスコミ報道でも、裁判所の判断として、創業家の持ち株比率の希釈化の目的はあったものと認めているようである。
 それにもかかわらず、差し止めを認めなかったのは、資金調達の必要性が主目的だったからだということであろう。いわゆる、主要目的ルールといわれる考え方である。最高裁の判例もこのルールを認めている。従って、主要な目的が資金調達目的であれば、持株比率の希釈化の目的も副次的に存在しても、不公正発行を理由とする差し止めを認めないという結論になるのであり、その意味では表面的には最高裁の判例に従った判断ということになるのであろう。理論的には、今回の新株発行が、第三者割当ではなく公募だったことから、現経営陣による会社支配目的を認めることはできない点が、主要目的ルールを適用する上での一つの視点として有力視される可能性があるだろうか。

 しかし、かなり乱暴な言い方をしてしまうが、結論に至る理由など後付けでいくらでも判例に従った理由を探し出すことはできるのであって、主要目的ルールに当てはまるような理由を考え出すことなど、裁判所にとってはいとも簡単である。新株発行を行う会社側も、一応それなりの名目をお膳立てした上で新株を発行するのであるから、その中から裁判所が主目的を選び出すことなど、朝飯前であろう。
 決して判旨に現れることはないのだが、真の理由は、裁判所も創業家のわがままを感じ取っていたのではないだろうか。だからこそ、経営陣と創業家との対立がある中での新株発行を、裁判所も認めてしまったということを推測するのだが、どうだろう。

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