実務家弁護士の法解釈のギモン

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一般社団,一般財団法人法 - 評議員・評議員会(1)

2010-01-12 10:21:16 | 一般法人
 一般財団法人においては、評議員会が必置の機関とされたことは、すでに以前のブログで述べたとおりである。
 評議員会の権限は、法律・定款事項に限り決議することができることとされているが(178条2項)、法が定める評議員会の権限は、理事・監事・会計監査人の選任・解任(177条・63条、176条)、計算書類の承認(199条)、定款変更(200条)など、主に一般社団法人では社員総会が決議すべき事項について評議員会に決議する権限を与えている。また、評議員会の手続については、その招集手続(179条以下)、評議員提案権(184条以下)、評議員会に関する検査役の選任(187条)、普通決議と特別決議の存在(189条)、理事等の説明義務(190条)、資料等の調査(191条)、延期・続行(192条)、議事録の作成等(193条)、全員が同意している場合の決議、評議員会への報告の省略(194条、195条)など、ほぼ一般社団法人の社員総会と同等の規定をおいている。したがって、評議員会は、理事会設置一般社団法人における社員総会と非常によく似た機関ということができる。
 社員総会の権限、手続と違う点を上げるとすれば、まず役員及び会計監査人の解任は、一般社団法人の場合は社員総会の決議でいつでも解任できるが(70条)、一般財団法人の場合、職務上の義務違反や心身の故障がある場合などに限られ(176条)、また、評議員会の議長の権限は定められていない(社員総会の議長の権限は54条)などである。

 もっとも、評議員会が社員総会と非常によく似た機関だとしても、社員の概念のない一般財団法人において、誰が評議員になるかは自明のことではない。そこで、評議員の選任・解任の方法は定款に定めることとしている(153条1項8号)。ただし、理事又は理事会が評議員を選任し、又は解任する旨の定款の定めはその効力を有しない(同条3項1号)。これは、理事の選任が評議員会の権限とされていることから、その評議員の選任を理事(会)の権限とすると、理事(会)と評議員(会)の同質化が起こるからであろう。当たり前といえば当たり前かもしれないが、評議員会の選任に理事や理事会が全く関与できないのかどうかは、必ずしも明らかではないのではないか。例えば、一定の要件を満たす人物(評議員会や第三者機関が候補者を推薦するなど)の中から理事会で評議員を選任するのはだめなのか、あるいは逆に理事会が候補者を推薦した中から評議員会や第三者機関が選任するのはどうなのか。さらには、第三者機関といいながら、その機関のメンバーの多数が理事で占められている場合はどうか。理事や理事会の関与を完全に排除する趣旨だとすると、評議員の選任方法にかなり工夫を凝らさないと選任そのものが困難になりそうに思うのだが……。
 おそらく、これまで評議員会を任意設置していた財団法人における評議員の選任方法は、その全部又は一部を評議員会自身で選任したり、あるいは理事会で選任したりしていたと思われる。一部の評議員でもその選任に理事や理事会が関わっていた財団法人は、新法移行後は評議員の選任にいろいろと工夫を凝らす必要が出てくるであろう。

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