実務家弁護士の法解釈のギモン

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裁判上の担保の法的性質と権利行使方法(1)

2013-05-17 10:07:20 | 最新判例
 広い意味で民事訴訟の手続の中で、担保の提供が必要となる場面がいくつかある。

 担保の提供に関する民事訴訟法上の基本規定は、訴訟費用の担保に関する民事訴訟法75条以下である。この規定は、他の法令によって訴えの提起について担保を立てる必要がある場合に準用され(民事訴訟法81条)、具体的には会社の組織に関する訴えにおける担保(会社法836条)がある。
 ほかに仮執行宣言の際の担保(民事訴訟法259条1項、2項、控訴審判決においては同法310条但書、少額訴訟においては同法376条1項)、仮執行免脱宣言における担保(同条3項)、執行停止の裁判における担保(同法403条)、民事執行法上の担保(民事執行法15条)、民事保全における担保(民事保全法4条)がある。これらの担保についても、訴訟費用の担保の規定が準用されている。そのため、訴訟費用の担保に関する規定は、広い意味での民事訴訟の手続における担保提供の基本規定ということになるのである。
 そして、これら担保を総称して裁判上の担保という言い方ができると思う。

 ただし、訴訟費用の担保の規定と、その他の担保の規定とで大きく違う点があると思っている。それは、訴訟費用の担保において担保される権利は、被告が勝訴等した場合の訴訟費用そのものを担保するのであるが、その他の担保は、権利行使が違法だった場合に生じる可能性のある相手方の損害、あるいは仮に権利行使を阻止することにより生じる可能性のある権利者の損害を担保するためのものであり、すべからく損害賠償請求権を担保するものだという点である。私は、この違いを、決して小さくない違いだと思っている。
 それにもかかわらず、実務上、訴訟費用の担保の規定が重要な意味を持つ場面は、訴訟費用の担保の場面ではなく、その他の場面の方が圧倒的に多く、実務上は、ほとんど圧倒的に、損害賠償を担保するための担保提供の規定として、訴訟費用の担保の規定が活用されていると言って過言ではないと思われるのである。
 私は、ここに解釈上の問題点が生じると思っている。

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