実務家弁護士の法解釈のギモン

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譲渡禁止特約付債権の担保(5)

2010-09-13 10:26:24 | 債権総論
 そこで,話を譲渡禁止特約付債権の譲渡担保にもどしてみる。
 もし,債権の譲渡担保も担保的構成で考えられるならば,債権の譲渡担保は,「債権譲渡」ではなく「担保権の設定」であり,質権設定と本質は同じと考えることができると思う。そして,譲渡禁止特約付債権の質権設定が可能だとすれば,譲渡担保も全く不可能ではないように思う。

 ただし,問題は理念だけの問題ではない。譲渡禁止特約が債務者保護のためにあるとすれば,債務者の立場から譲渡担保がどのように見えるかが,重要な問題となってくる。

 そして,実務的に債権の譲渡担保として多く行われているのは,例えば,銀行その他の貸金業者が融資をする際に債権の譲渡担保の設定契約をしつつも,債権譲渡通知書は貸金業者が預かったまま直ちには発送せず,弁済が遅滞してから譲渡担保権を実行する目的で,預かっていた債権譲渡通知を発送手続をとる(譲受人である貸金業者を譲渡人の使者として理解するのであろう)ということが多いように見受けられる。
 このような場合は,譲渡通知を発送する段階では既に当該債権を確定的に譲受人に帰属させる意思のもとに譲渡通知を発送していることが考えられ,その通知内容も確定的に譲り渡したかの如くの記載となっていることがほとんどだと思われる。そして,譲渡の対象となった債権の債務者の立場から見れば,対抗要件である債権譲渡通知が届いた時を基準に,その譲渡の有効性を考えることになるのであろう。そうだとすると,このような事例を債務者の立場で見ると,単純な債権譲渡とほとんど変わらない。
 してみると,実務的に多く行われているであろうと思われるこのような事例では,いくら担保的構成といってみても,その譲渡担保の効力を当然に認めることには,さすがに躊躇を覚えざるを得ない。

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