実務家弁護士の法解釈のギモン

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債権法改正-異議をとどめない債権譲渡の承諾(3)

2015-06-09 10:13:52 | 債権総論
 債権法の改正では、この異議なき承諾の制度は廃止される。したがって、無条件に債権譲渡に承諾しても、抗弁が切断されることはなくなる。

 改正法を前提によく考えて見れば、確かにそれで何の問題もないはずであり、むしろ異議なき承諾に抗弁の切断を認めていた現行法こそ、ちょっとした不注意で承諾してしまった債務者の揚げ足を取るような、かなり過剰な効果を認めていたような気がしている。
 確かに、譲受人がその存在を知らなかった抗弁を主張されると、譲受人にとっては困る場合もあろう。しかし、通知にとどまる場合は抗弁の対抗を受けることは当然のことであり、もともと抗弁付の債権を譲り受けているに過ぎないと思えば、やむを得ないはずである。例え債務者が無条件に承諾したとしても、その抗弁を切断させる必要性があるほどに債務者が大きな過ちをしているとは思えないのである。
 これまでの判例でも、異議なき承諾の効果は、譲受人の善意を要件とするなど、債務者にとって酷となりすぎないように比較的限定的に解釈していたのではないだろうか。先日の、無過失をも要求して公信力説を採用したと言ってもいい判例が登場するのも、そうした流れの一つであろう。そうした判例の努力を受けてか、一切抗弁切断の効果を否定した今回の改正は、私自身は納得である。

 ロースクールで教える立場からすると、学生が勉強すべき論点が一つ減ることになり、学生にも朗報といえるだろう。

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