みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0587「難問」

2019-07-01 18:27:58 | ブログ短編

 夜の闇(やみ)に紛(まぎ)れて、とある古(ふる)ぼけた屋敷(やしき)にやって来た二人。どう見ても、泥棒(どろぼう)にしか見えない。重厚(じゅうこう)な扉(とびら)の前で立ち止まると。
「どうやら、ここのようだ。この扉の向こうに、秘伝(ひでん)の書(しょ)があるはずだ」
 扉を開けようとしたが、鍵(かぎ)がかけてあるのかびくともしない。二人は、扉の横にタッチパネルがあるのを見つけた。そこに書かれていたのは、「ソウニョウ×3」の文字。
「何だこれは? 何かの暗号(あんごう)なのか…。お前、分かるか?」
「ソウニョウ…。もしかして、これって漢字(かんじ)のことじゃないのか」
 そう言うと、タッチパネルに、「走、起、越」と三つの漢字を書いてみた。すると、鍵の外(はず)れる音がして、扉が音もなく開(ひら)いた。手をたたいて喜(よろこ)ぶ二人。だが、扉を開けて入ってみると、目の前にまた同じ扉が待ち構(かま)えていた。今度もタッチパネルがあり、そこには「1+1=」と書かれていた。そしてその下に注意書(ちゅういがき)が、
「チャンスは一回だけ。もし間違(まちが)えたら、奈落(ならく)の底(そこ)へ落ちることになるだろう」
 二人は考え込んだ。普通(ふつう)に考えれば答(こた)えは「2」だ。しかし、こんな簡単(かんたん)な問題(もんだい)なのか…。小学生でも答えられるぞ。秘伝の書だぞ。これでいいのか? それに奈落の底って何だ。二人は床(ゆか)へ目をやった。板張(いたば)りで、何となく二人の重みで凹(へこ)んでいるような――。
「まさか、落(お)とし穴(あな)になってるんじゃ…。どうする? そんなに、欲(ほ)しいものでも…」
「そうだな。どうしても手に入れたいわけじゃ…。今日は、止(や)めておこう」
<つぶやき>そんなに簡単(かんたん)にあきらめちゃだめじゃない。でも、何の秘伝なんでしょう?
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