僕(ぼく)の彼女には変なスイッチがある。そのスイッチが入ると、もう誰(だれ)にも止められない。
「ねえ、この会社(かいしゃ)どうかしら? とってもいいと思うんだけど」
彼女は僕に会社の資料(しりょう)を見せながら言った。「パパの知り合いの社長(しゃちょう)さんがやってるの。今、良(い)い人を探(さが)しててさ。浩人(ひろと)にぴったりだと思うんだ」
「いいよ。別に、君(きみ)に探してもらおうなんて…」
「そうじゃないわよ。あたし、浩人に…」
「大丈夫(だいじょうぶ)だよ。就職先(しゅうしょくさき)ぐらい自分(じぶん)で見つけるから」
「分かってるわよ。分かってるけど、あたしも力になりたいの」
「もう、勝手(かって)なことすんなよ! 俺(おれ)だって、ちゃんと考えてるんだから」
つい感情的(かんじょうてき)になったことを、僕は後悔(こうかい)した。彼女の目つきが変わり、スイッチが…。
「ねえ、あたしがせっかく探してきてあげたんでしょ。何なのよ、その態度(たいど)は」
彼女は会社の資料を僕に投(な)げつけて、
「ちゃんと見なさいよ。見もしないで何がわかるの。あんたさ、そんなんだから就職できないんでしょ。いつまでもプラプラしてさ、ほんとに働(はたら)く気あるの? もう話はつけて来たから、絶対(ぜったい)面接(めんせつ)に行きなさいよ。今度逃(に)げ出したら、ただじゃすまないから」
<つぶやき>彼のことを心配(しんぱい)してるから、ついつい余計(よけい)なお世話(せわ)をやいてしまうのです。
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