「ねえ、今の人って誰(だれ)なの?」鈴子(すずこ)は真理(まり)に訊(き)いた。
「ああ、彼は――」真理はにっこり微笑(ほほえ)んで言葉(ことば)をにごした。
真理は合う度(たび)に違(ちが)う男に送(おく)られて来る。どれも美男子(びだんし)かお金持(かねも)ちそうな男ばかり。友達の間ではけっこう噂(うわさ)になっている。鈴子も興味津々(きようみしんしん)でいるのだ。
「この間の人とは違うわよね」鈴子はたまらず訊いてみた。
「この間の?」真理は首を傾(かし)げて訊き返す。
「そうよ。今の人とは違ったわよね?」
「そうだったかしら――」真理はそう言うと、また微笑んだ。
鈴子は思った。きっと男たちは、この微笑みにやられちゃうのね。
確(たし)かに、彼女の微笑みには男をとりこにするような魔力(まりょく)があった。その力(ちから)は、学生の頃よりもさらにパワーアップしている。
「真理って、彼氏(かれし)っているの?」鈴子はさらに突(つ)っこんだ。
周(まわ)りにいた友達は、驚(おどろ)きの目で鈴子を見た。今まで、真理に男の話しをふるのはタブーとされていた。まして、彼氏のことを訊くなんて…。でも、みんなの不安(ふあん)をよそに真理は、
「あたし、まだ好きな方はいないのよ。なかなか縁(えん)がなくて」
真理のお嬢様(じょうさま)ぶりに、鈴子もこれ以上(いじょう)なにも言えなくなってしまった。
<つぶやき>好きな人に微笑みかけられると、ぞくぞくってしませんか。恋の魔法(まほう)かもね。
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