居酒屋(いざかや)で酒(さけ)を飲みながら近藤(こんどう)が言った。
「お前、ほんとにいいのか? 佐知(さち)に、幼(おさな)なじみだって言わなくても」
「僕(ぼく)のことなんか、覚(おぼ)えてないですよ。小学生の頃(ころ)ですからね。仕方(しかた)ないっていうか…」
「でも、約束(やくそく)したんだろ? 再会(さいかい)したら――」
「もういいです。二十年もたってますから、覚えてないのは当然(とうぜん)で…」
近藤は急に話題(わだい)を変えて、「そうだ。佐知、結婚(けっこん)するって言ってたなぁ」
「け、結婚! そんな…。ほ、ほんとですか?」
「ああ。明日、彼と式場(しきじょう)を見に行くとか…。お前、それでも…。これが最後(さいご)かも…」
――とある公園(こうえん)。佐知が誰(だれ)かと待ち合わせをしているようだ。そこへ電話が…。
「ああ、俺(おれ)だけどさぁ。もう着いてるか?」
「近藤さん。どうしたんですか、急にあたしを誘(さそ)うなんて。何かあったんですか?」
「それがさぁ…。俺から誘ってわるいんだけど、行けなくなっちまった。で、俺の代(か)わりに吉岡(よしおか)が行くから頼(たの)むわ。なんか、お前に話があるんだってさ」
「吉岡さんが? あたしに…。なんだろ?」
「それで、あいつ、変なこと言うかもしれないけど、黙(だま)って聞いてやってくれないかなぁ。頼むわ。とっても大事(だいじ)な話だって言ってたから。ちゃんと聞いてやれ」
<つぶやき>さて、彼女は約束を覚えているのか? 再会しても気づかないってことは…。
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