「それで、どうなのよ?」春奈(はるな)はビールを飲み干(ほ)すと言った。
「えっ、何が?」麻美(あさみ)は焼き鳥を頬張(ほおば)りながら答える。
「何がって。ほら、この前、話してた新人(しんじん)のことよ。うまくやってるの?」
「ああ…。そ、そうね。まあ、何とかね」
「何よ、歯切(はぎ)れの悪(わる)い。後輩(こうはい)なのに二つも年上(としうえ)で、嫌(いや)だなぁって言ってたじゃない。使えない奴(やつ)だったらどうしようって。ねえ、どうなのよ。鈍(どん)くさい奴だった?」
「そ、そんなことないわよ。とっても良い人だったわ。仕事(しごと)の覚(おぼ)えも良いし」
「何だ。つまんないの」
春奈は店員(てんいん)にビールの追加(ついか)を注文(ちゅうもん)すると、麻美の顔を覗(のぞ)き見て、
「何よ、ニヤニヤしちゃって。何か、良いことあったでしょ。教えなさいよ」
「ないわよ、そんなの…。やだ、なに言ってんの。やめてよ」
「あやしいィ。――そんなに良い男だった? 今度の新人」
麻美は春奈に見つめられてかなり動揺(どうよう)しているようで、変なテンションになっていた。
「そ、そんなんじゃないわよ。もう、やだ。私、そんなこと…。もう、やめてよ」
「あんたって、ほんと分かりやすいよね。で、今度は告白(こくはく)できるの?」
「こ、告白って…。私たち、そういうあれじゃないから…。変なこと言わないでよ」
<つぶやき>どこで恋(こい)がころがっているか分かりません。見落(みお)とさないようにしましょう。
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