ある日の、月がきれいな夜のこと。彼女は会社(かいしゃ)からの帰宅途中(きたくとちゅう)で真(ま)っ白なうさぎに出会った。そのうさぎは、道路(どうろ)の端(はし)をピョンピョンてくてくと歩いていた。そして、なぜか彼女の方へ近づいて来る。彼女は思わず立ち止まった。なぜこんなところにうさぎが…。
うさぎはどんどん近づいてくる。思ってたより、ずいぶん大きなうさぎだ。彼女は足がすくんでしまった。助(たす)けを呼(よ)ぶにも、あたりには誰(だれ)もいない。うさぎは彼女の前で止まって、彼女を見下(みお)ろした。うさぎは、彼女の背丈(せたけ)よりも高くなっていたのだ。
うさぎは彼女に言った。「あなたは、かぐや姫(ひめ)ですか?」
彼女は首(くび)を振(ふ)って違(ちが)うと答(こた)えた。でも、うさぎは聞く耳(みみ)を持たないようだ。彼女に向かって、「かぐや姫、そろそろ月へ戻(もど)ってください。お願(ねが)いします」
うさぎは丁寧(ていねい)に言うと頭を下げた。彼女は、また違うと言ったのだが、うさぎはまったく無反応(むはんのう)だ。うさぎが彼女にふれると、彼女の服(ふく)が十二単(じゅうにひとえ)に替(か)わってしまった。彼女は、服の重(おも)さによろけそうになった。また、うさぎが言った。「お迎(むか)えの牛車(ぎっしゃ)が到着(とうちゃく)しました」
彼女の目の前に、豪華絢爛(ごうかけんらん)な牛車が現れた。彼女は逃(に)げることもできかなった。いつの間にか、彼女は牛車に乗(の)り込んでいた。彼女の隣(となり)には小さくなったうさぎが…。
彼女はため息(いき)をついて言った。「なんでよ。あたしは、もう少しここにいたかったのに…」
うさぎは彼女を見上(みあ)げて、「もう千年以上(いじょう)たってるんですよ。いい加減(かげん)にして下さい」
<つぶやき>かぐや姫のかくれんぼはこうして終わったのです。でも、今度は月世界(げっせかい)で…。
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