みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0203「恋人体験」

2018-04-20 19:12:23 | ブログ短編

 ビル街(がい)にある小さなレストラン。表(おもて)には看板(かんばん)もなく、外からではそこにお店があるとは分からない。店内(てんない)には小さなテーブルがいくつか置かれ、それぞれに二つの椅子(いす)が並(なら)べられていた。どう見ても、どこにでもありそうなレストランである。
「ここで、恋人体験(こいびとたいけん)をしていただきます」
 男はテーブルにつくと、若(わか)い女性に言った。女性はソワソワしながら、
「あの、ほんとに大丈夫(だいじょうぶ)なんですか? 取(と)り憑(つ)かれちゃったりとか…」
「大丈夫ですよ。お相手(あいて)をするスタッフは信頼(しんらい)できるエキスパートですから」
 女性は店内を見回(みまわ)した。テーブルには一人だけ客(きゃく)が座(すわ)っているのに、料理(りょうり)や飲み物は二人分置かれている。それに、それぞれの客は、目の前の誰(だれ)もいない席(せき)に話しかけたり、笑(わら)ったりしているのだ。不思議(ふしぎ)そうな顔をしている女性に向かって男が言った。
「みなさん、楽しそうでしょ。ここで、異性(いせい)との会話(かいわ)の仕方(しかた)などを練習(れんしゅう)していただきます」
 女性は不安(ふあん)そうにうなずいて、「私にも、できますか?」
「もちろんです。事前(じぜん)にお伺(うかが)いしたご要望(ようぼう)から、何人かピックアップしておきました」
 男は写真(しゃしん)付きのリストを彼女に見せた。「この中から、お選(えら)びいただけますか」
 そこにあるのは、どれも彼女好(ごの)みの男性ばかり。男はさらに付け加えた。
「ただし、これは店内のみで、お持ち帰りはできませんので、ご注意(ちゅうい)ください」
<つぶやき>生身(なまみ)の人間じゃないので、会話が苦手(にがて)な方も気楽(きらく)におしゃべりできるかも。
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