気の置(お)けない仲間(なかま)たちが集まってホームパーティーが開かれた。その中ではいろんな話題(わだい)が飛び交った。だが、一番の話題になったのは…。
「なあ、あの二人って付き合ってるんだよね?」
台所(だいどころ)で皿(さら)を洗(あら)ったりしている二人をさして、男が言った。隣(となり)にいた女がそれに答えて、
「それがさぁ、まだなの。あの微妙(びみょう)な距離感(きょりかん)を見れば分かるでしょ」
確(たし)かに、二人の間には意識的(いしきてき)に取っているのか、ちょっとした空間(くうかん)が空(あ)いていた。
「あと10センチよ。あの距離(きょり)があと10センチ縮(ちぢ)まればベストカップルなのに」
女は残念(ざんねん)そうにため息(いき)をつく。別の男が割(わり)り込んできた。
「じゃあ、俺(おれ)、付き合っちゃおうかな。だって、彼女、俺のタイプなんだ」
「アンタね。空気(くうき)を読みなさいよ」女は男の頭を小突(こづ)いて、「今日のこの会の趣旨(しゅし)はね、あの二人をくっつけることでしょ。邪魔(じゃま)してどうすんのよ」
「えっ、そうなの? 俺、そんなこと全然(ぜんぜん)聞いてないけど」
「今、私が決(き)めたの。――もう二年よ。お互(たが)いに好き合ってるくせに、いつまでも良い友だちだなんて。そんなんでいい訳(わけ)ないでしょ。絶対(ぜったい)、くっつけてやる」
「どうしちゃったの? 君(きみ)がそんなに入(い)れ込むなんて」
「いいでしょ。あの二人がちゃんとしてくれないと、私も前へ進めないんだから」
<つぶやき>気持ちを確かめるには勇気(ゆうき)が必要(ひつよう)。でも、気持ちが分かったら分かったで…。
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