みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0640「しずく43~炎上」

2019-08-28 18:34:55 | ブログ連載~しずく

 楓(かえで)はもう一度しずくを抱(だ)きしめると、いとおしそうにしずくの顔を見つめて言った。
「さあ、もう行きなさい。あなたは、ここにいちゃいけないわ」
「行くって、どこへ? 離(はな)れたくないよ。私も一緒(いっしょ)に連れてって」
「あなたには、あなたのやるべき事(こと)があるの! それを成(な)し遂(と)げなさい」
 楓はいつも身(み)につけている赤い石のついたペンダントを外(はず)して、それをしずくの首(くび)へかけてやった。そして、何かを念(ねん)ずるように赤い石を握(にぎ)りしめた。
「これって、おばあちゃんの形見(かたみ)の…、お母さんが大事(だいじ)にしてた…」
「そうよ、あなたが持ってなさい。いい、忘(わす)れないで。あなたは一人じゃないわ。離れていても、いつも家族(かぞく)は一緒よ。それに、あなたには親友(しんゆう)がいるでしょ」
「あ、つくねは…。つくねは、どこにいるの? 先(さき)に帰ったはずよ」
「あの娘(こ)は、大丈夫(だいじょうぶ)…。きっと外(そと)で待ってわ。――さあ、行きなさい」
 しずくは、何度も後ろを振(ふ)り返りながら部屋を出た。楓は、しずくを見送ることはしなかった。しずくは玄関(げんかん)で母親を呼(よ)んでみた。しかし、返事(へんじ)が返(かえ)ってくることはなかった。静(しず)まり返った家――。しずくは玄関を出ると、後ろ手に扉(とびら)を閉めた。涙(なみだ)があふれてきた。しずくは手でそれをぬぐい、駆(か)け出した。
 路地(ろじ)の角(かど)へ来たとき、後ろの方から激(はげ)しい爆発音(ばくはつおん)がして、しずくは思わず立ち止まった。後ろを振り返ると、さっきまでいた家が炎(ほのお)に包(つつ)まれていた。
<つぶやき>どうして爆発したんでしょう。楓は無事(ぶじ)なのかな? これからしずくは…。
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