熟年新米弁理士のひとり言

平成18年に59歳で弁理士試験に合格した企業内弁理士です。弁理士試験、企業での知的財産業務について、気軽にお話します。

フール・プルーフ

2012-01-07 17:18:00 | Weblog
NHKニュースで、「京都大学附属病院で、去年、人工透析を受けていた50代の男性が死亡した医療事故は、専門の技士が行っている透析の装置の部品交換を技士がいない夜間に医師と看護師だけで行ったことが原因とみられることが分かり、関係者は全国の医療現場における技士不足が背景にあると指摘しています。」
という報道をしていました。

透析装置の血液中の老廃物を取り除く部品と誤って、血液の成分を取り除く部品が取り付けられたことが医療事故の原因だそうです。

2つの部品は、よく似ていて、ふだんは専門知識を持った「臨床工学技士」が部品の交換をしていましたが、技士がいなかった夜間に医療事故が起きたということです。

この医療事故の対策として、「京大病院は、医師と看護師だけで高度な医療機器を操作したことが事故の原因だった疑いが強く、技士の数が十分でないことが背景にあるとして、臨床工学技士が24時間の対応ができるようことし4月から人員を増やし、正規の職員としても採用する方針を固めた」そうです。

このニュースを聞いて、品質管理活動、改善活動に従事した経験がある私としては、ピンと外れな対策をとっているなと感じました。

このような事例は、正にフール・プルーフの対策が必要なのに、その対策がなされていないのではと思われたからです(報道されていないだけで、実際には対策が取られているかもしれませんが)。

フール・プルーフとは、工業製品や生産設備、ソフトウェアなどで、利用者が誤った操作をしても危険に晒されることがないよう、設計の段階で安全対策を施しておくことです。

正しい向きにしか入らない電池ボックス、ドアを閉めなければ加熱できない電子レンジ、ギアがパーキングに入っていないとエンジンが始動しない自動車、などがフールプルーフな設計の例である。

「fool proof」を直訳すれば「愚か者にも耐えられる」だが、その意味するところは「よくわかっていない人が扱っても安全」です。

その思想の根底には「人間はミスするもの」「人間の注意力はあてにならない」という前提があり、安全設計の基本として重要な概念です。

私が研究者だったときに、TQC活動が導入され、研究所にも適用されることになりました。

QC活動は、元々工場部門に適用される活動でしたが、対象を技術部門、営業部門等にも拡大して、TQC(Total Quality Control)活動としたものです。

このTQCの考え方に、多くの研究者、技術者は懐疑的、批判的で、積極的に実践しようとはしませんでした。

この根底には、QC活動は工場勤務の従業員が行えば良いものという偏見があったこと、専門家意識が強すぎて、「fool proof」、すなわち「よくわかっていない人が扱っても安全」という考え方を取り入れるのに抵抗があったのではと思われます。

私は、なるべく偏見を持たないようにしていますので、TQC活動を実践して効果があるのか、ないのかを検証したいという思いが強く、TQC活動にも積極的に取り組んでいました。

TQC活動を実践した経験から、TQC活動は研究部門、技術部門にも工夫しだいで十分適用できる手法で、今回の医療事故の対策としても活用できます。

医療現場に従事する人も専門家意識を抑えて、フール・プルーフ対策を勉強したほうが良いと思うのですが。




ブログランキングに参加しています。よろしければ、以下のURLから投票して下さい。

日記@BlogRanking


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする