徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

ロマネスクサマー•ケルン(音楽フェスティバル)2016

2016年06月23日 | 日記

現在ケルンではロマネスクサマー・ケルン2016(Romanischer Sommer Köln 2016)という音楽フェスティヴァルが開催中です。「時空間を通じて聴く・道」をモットーに中世的な音楽をケルンのロマネスク様式の教会で堪能する、どちらかと言うと地味な催し物です。

私はチケット・ケルンというチケット販売サイトからのメルマガでこのフェスティヴァルを知り、丁度コンサート三つセットチケットが割安で販売されていたので、6月23日は平日にもかかわらず、滅多にない機会だからと買ってしまいました。この為に有給休暇を一日取りました。

聖パンタレオン教会

本日最初のコンサートは「ロマネスクの昼休みーRomanische Mittagspause」というタイトルで、開始時間は12:45。このところずっと☁だったり☂だったりで、気温は20度超えればいい方だったのに、今日は快晴で、いきなり33度。溶けそうなくらい暑い中、聖パンタレオン教会へ向かいました。下の写真は教会近くの公園。

聖パンタレオン教会の中はひんやりと涼しくて、助かりました。元は10世紀に創設されたベネディクト教会で、12世紀にバシリカに建て替えられ、19世紀に西翼が改築されたそうで、なかなか長い歴史のある教会です。

講壇と懺悔室があるので、カトリック系ですね。

コンサートの演奏者はアンサンブル・ミクストゥーラ(Ensemble Mixtura)というアコーディオンとシャルマイ(Schalmeiまたはショーム)のコンビ。シャルマイはもともとはイランのSornay、トルコのZurnaがヨーロッパに渡って進化したものと言われており、中世及びルネサンス期に最盛期を迎えた楽器です。バロック時代になり、オーボエが登場してからはほとんど姿を消していたのだそうです。20世紀半ばにある種の『再発見』があり、中世・ルネサンス音楽の演奏を始め、フォークなどにも使われているのだとか。

演奏された曲は全て現代の作曲ですが、14世紀の音楽にインスピレーションを受けているとのことでした。実際中世のお祭りなどで演奏されたようなメロディーもあり、なるほどと納得のいくものでした。演奏された曲の題名などは全然言及されなかったのでさっぱり分かりませんが、アルプスに放牧されたヤギや牛を思い浮かべてしまうような牧歌的な曲もあれば、中世の修道院に好奇心と一種の畏怖感というか緊張感を持ちながら入っていって、探検しているうちにおどろおどろしい雰囲気になり、終いにはなんかやばいものが出てきた、というイメージ(私の勝手な脳内変換)が湧いてくるような曲、ホラー映画のサウンドとしか思えないようなものとかもありました。そうかと思うと、演奏者の足元にとっちらかってる紙をアコーディオンの和音(あるいは不協和音)に合わせて破くパフォーマンスや、足を踏み鳴らして効果音として使ったりと、非常に面白かったです。毎日聞きたいとは思いませんけど。シャルマイのよく通るメリハリのある音にかぶさるアコーディオンの伴奏が教会の荘厳さの中でゆったりと響き渡る時、未知の世界へ誘うような不思議な気持ちになりました。

聖ウルズラ教会

二つ目のコンサートは聖ウルズラ教会で、開演時間は20:00。聖ウルズラ教会は1135年からバシリカ。その後いろいろ増築されています。現在位置はケルン中央駅から北西に徒歩10-15分くらいのところです。尖塔のバロック風冠は17世紀のもの。

出演者はムジカ・フィアータ(Musica Fiata)とカペラ・ドゥカーレ(Capella Ducale)というグループで、ローラント・ウイルソン指揮の下、1650年のベネチアを音楽的に再生。モンテヴェルディと彼と同時代人の作品が演奏されました。楽器は見てわかる限りではオルガン、ヴァイオリン、ハープ、トランペット、ファゴット、テオルボ。そして男女混成の合唱団。ベネチアのサンマルコ聖堂のように、聖ウルズラの2階席及び祭壇の奥行で独特の音響空間が再現される、とのこと。

実際、素晴らしい音響でした。音楽もこれぞまさに教会音楽という感じでしたが、バッハとは一味違う中世的な素朴さがあり、ロマネスク様式の教会によく合ってると感じました。バッハはバロック教会というイメージですが。

曲目によって舞台に上がる歌手の人数が変わり、女声だけあるいは男声だけの曲もありました。楽器は決して歌声の伴奏ではなく、むしろ歌声の方が楽器の一つになっていたように感じました。

出入り口でCD販売していたので、2つ購入しました。2つで25ユーロ也。大量生産でない分割高ですね。ライブには若干劣るとはいえ、満足な音質です。

 

聖アンドレアス教会

三つ目のコンサートは聖アンドレアス教会で22:00から。この教会はケルン大聖堂・ケルン中央駅から徒歩3-5分くらいのところにあります。私たちは聖ウルズラ教会から歩いて移動しました。この教会も10世紀に創立され、12世紀にクロッシングが加えられ、更にゴシック様式の聖歌隊席などが中世後期に増築されました。

さてこの教会の中に入って、困ったことが起こりました。私はダニ、ハウスダスト、カビなどに対するアレルギー持ちで、古い教会では場所によってアレルギー反応を起こしてしまうのです。聖アンドレアス教会はまさにアレルゲンの宝庫だったようで、入ってしばらくすると咳が出て、息ができなくなるほど。コンサートが始まった直後でしたが、取りあえず外へ出ました。残念ながらマスクの手持ちがなかったので、どうしようかと考えた末にハンカチを鼻と口に当ててもう一度はいることにしました。すぐに出られるように出口近くに座ったので、楽器などはあまり詳しく見ることはかないませんでした。でもハンカチで何とかコンサート終了前の約1時間持ちこたえました。若干苦しかったですが…

演目はケルンのドミニク修道会系尼僧院パラディーゼ由来のあまり知られていないグレゴリオ聖歌。パラディーゼの尼僧の作も何点か入っている可能性がある手書きの礼拝式聖歌集を再現したもの。マリア・ヨナス(Maria Jonas)指揮で女性ばかりの合唱団アース・コラーリス・ケルン(Ars Choralis Coeln)が出演。女声によるグレゴリオ聖歌は初めて聞きましたが、これも教会で聞くと美しくていいですね。心が洗われるようです。

難を言えば、どの曲もなんだか同じように聞こえることでしょうか。楽器が変わるので辛うじて違う曲だと分かる感じです。この点では男声によるグレゴリオ聖歌も同様なのですが。

今日は比較的珍しい演目のコンサート3つを堪能できて、贅沢な一日でした。ロマネスクサマー・ケルンは明日で終わりです。明日はバッハやシューベルトなどのメジャーどころやジャズなどの現代的な演目みたいです。フェスティヴァル中一番おいしいプログラムは今日だったと思いますね。

明日は今日休んだ分の仕事をしないといけません。では、おやすみなさい。