徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語 第九幕』(富士見L文庫)

2019年03月02日 | 書評ー小説:作者ヤ・ラ・ワ行

本編第八幕を読んだのが随分前だったので、第九幕の話の進行にいまいちついて行けず、思わず第八幕を読み直してしまいました。

第九幕は、作者的に第2部第1話らしいですが、「それは、筋肉の大群だった」の出だしはユーモアがあって面白かったのですが、全体としては政情の不穏さの描写と関小玉皇后の幸せについての感傷的な叙述が大半を占め、敵の生き残りともいえる司馬淑妃の父司馬元尚書と彼に撲殺されたはずだった廃皇子・鳳の後日談として司馬元尚書が反乱らしきものを試み、小玉がそれをあっさりと制圧することになったため、ハイライトと言える出来事がないように感じられました。今後の展開の伏線が張られただけ?と思わなくもないです。

小玉が育てた皇子・鴻が立太子され、それによって小玉がさらに力をつけることを嫌った勢力が次々と細々と問題を起こしていき、また、後宮の大黒柱とも言うべき梅花亡き後、後宮の規律も乱れ、それらが功をなして宮廷内の勢力図が微妙に変化していく政情の不穏さが詳述されているので、こうした事情が以後大きな事件に発展していくのかなと次巻に期待したいところです。


書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語』第零~七幕(富士見L文庫)

書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語 第八幕』(富士見L文庫)

書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語 第零幕 三、二人の過誤』