徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語 第八幕』(富士見L文庫)

2018年06月16日 | 書評ー小説:作者ヤ・ラ・ワ行

辰国皇后であり武官である関小玉が隣国・寛との最前線で矢傷を負って、矢の汚れによって症状が悪化し、かなりピンチに陥っているところで「次巻に続く」になっていて、「なんでまた次が出ていないんだ?!」と悶絶してからさほど日数が経ってないのに新刊が出たので、喜んで一気読みしました。実はカズオ・イシグロの『A Pale View of Hills』を読んでいる最中でしたが、英語だというのと、話の内容が「先が気になって仕方ない」というほどわくわくするようなものではないので、中断するのに躊躇はしませんでした( ´∀` )

第八幕は宦官武官である賢恭が小玉に代わって軍を指揮し、辺境民族の協力を得て隣国・寛との戦いに挑むところから始まります。小玉は病状が一時期悪化したものの、治療の甲斐があって徐々に回復していきます。

これまでも小玉の親友の明慧が任務で皇子を守るために命を落とし、第七幕では明慧の夫が小玉を守るために命を落とし、この巻では皇后のお世話係である梅花、後宮で皇后に一番派手に反発していた司馬淑妃そしてその息子・鳳が命を落とすことになります。

この主人公の敵も味方もどんどん人が死んでいくシビアさや容赦のなさもシリーズの魅力の一つであると思います。主人公の関小玉は基本的に心優しい人ですが、皇后という立場をよく理解しており、一時の感情や同情に惑わされずにシビアな決断を下せる成熟した人間であることも魅力的です。

この巻で一応「第一部終了」なのだそうです。たしかに「次巻に続く」的に気になって仕方がない終わり方はしておらず、将来的な不安要素や気になる問題は残されているものの、それなりにキリがいい印象は受けました。


書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語』第零~七幕(富士見L文庫)

書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語 第九幕』(富士見L文庫)