徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:横溝正史著、『金田一耕助ファイル16 悪魔の百唇譜』(角川文庫)

2018年11月08日 | 書評ー小説:作者ヤ・ラ・ワ行

『悪魔の百唇譜』(1962)は中編の推理小説で、高級住宅街に止まっていた車のトランクから胸を一突きされて殺されていた女性の死体が発見されることから始まります。その後別の場所で新しいトヨペットの盗難車のトランクから男性の死体が見つかります。女性の方にはトランプのハートのクイーンが、男性の方にはジャックが残されており、また、男性の身元から数か月前に起こった「百唇譜事件」との関連が取り沙汰されます。百唇譜というのは、ろくでもない男が関係を持った女性たちの💋の紋を取り、日付やイニシャル、それに性癖やら体の特徴やらのメモを集めたもので、それをネタに脅迫を重ねていたのが、どうやら脅迫被害者によって殺されてしまい、犯人はまだ捕まっていませんでした。そしてトランクで見つかった男性はその殺された人の弟子みたいなもので、若くしてかなりろくでなし。

女性の方には内縁の夫があり、嫉妬深いことで有名で、最初はこの夫が疑われます。

真犯人は複数で、珍しく誰も自殺せずに逮捕されて終わります。

この作品では、金田一耕助があんまりやる気がなさそうなのが特徴的です。そもそも彼は前の事件が終わって自己嫌悪に陥り、ふらりと旅に出ようとしていたところにこの事件で等々力警部に取っ捕まって捜査に参加するのですが、特に推理力を発揮しているわけではありません。そして事件の目鼻がつくと後は警察に任せて結局旅に出てしまいます。

なんか作者も余りやる気がなかったのではないかと疑わしくなるほど、面白みがあんまりありませんでした。


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