横山秀夫尽くしです。あと4冊彼の小説が待機しています。
今日読んだのは『臨場』(2007.9)。「終身検視官」、「クライシス・クライシ」などの異名を持つ倉石義男が活躍する短編集。彼が主人公の物語はなく、収録作品にはそれぞれ別の主人公がいて、倉石は脇役として活躍します。誰もが自殺や病死と疑わない案件を殺人と見破り、また、殺人の見立てを「事件性なし」と覆すその慧眼で、敵多しと言えども、心酔者も多く、「倉石学校校長」の別名もあるほど。
収録作品は8編。
「赤い名刺」
「眼前の密室」
「鉢植えの女」
「餞」
「声」
「真夜中の調書」
「黒星」
「十七年蝉」
検視官が登場する話ですので、当然どの作品にも死体が出ます。偽装自殺、本当の自殺、他殺に見せかけた自殺、明らかな他殺。倉石は現場から、そして仏からどうしてその死に至ったかを的確に読み取っていきます。刑事ではなく、「鑑識」なので、犯人を挙げるようなことはしないのですが、場合によっては犯人の検討もつけてしまうこともあります。死んだ人に焦点が当たっているところが、刑事ものとは少し違っている部分でしょう。
スタイルは同じ短編集ということで、『第三の時効』や『陰の季節』と似たような感じで、「典型的な横山作品」と言えるのかも知れません。まだ彼の作品をそれほど読み込んでいないので、断言はできませんが。