徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:竹中平蔵編著『バブル後25年の検証』(東京書籍)

2016年09月11日 | 書評ー歴史・政治・経済・社会・宗教

竹中平蔵編著『バブル後25年の検証』(東京書籍)は税込み約2600円と比較的割高感のある本です。電子書籍だと1000円強になるので、なおさら割高感が強くなります。

割高にもかかわらず、なぜこの本を手に取ったかと言うと、『バブル後25年』は私にとってはまさしく空白の25年に等しく、断片的なネット情報ではなく、もっと総括的な情報と考察が欲しいと思ったからです。私が「バブル崩壊」のニュースを知ったのはドイツで、朝日新聞特派員のところでアルバイトしていた時のことでした。それから不良債権の問題が世間で騒がれ、不動産地価の暴落の被害は私の亡父のような細々と個人で営業していた人たちも追い詰めていきました。そのため、父からの少額の仕送りもストップし、私の方も結構窮地に追い込まれたのですが、それはともかくとして。

目次:

はじめに

序章 概観—バブル崩壊後の"まだらな25年" 竹中平蔵(慶応義塾大学総合政策学部教授)・真鍋雅史(嘉悦大学ビジネス創造学部准教授)

第I部

検証1 バブル後の財政:バブル後25年の財政・マクロ経済 高橋洋一(嘉悦大学ビジネス創造学部教授)

検証2 バブル後のマクロ経済:失政を繰り返してきた金融政策 原田泰(早稲田大学政治経済学術院教授)

検証3 社会資本:行政改革、構造改革と社会資本 真鍋雅史(嘉悦大学ビジネス創造学部准教授)

検証4 バブル後の金融市場:バブルは10年に1度やってくる 藤田勉(シティグループ証券株式会社取締役副会長)

第II部

検証5 社会保障:増え続けた年金・医療費 跡田真澄(嘉悦大学特任教授)

検証6 産業政策:政治に翻弄された産業政策 松原聡(東洋大学副学長・経済学部教授)

検証7 日本的雇用の功罪:陳腐化した雇用制度・雇用慣行 島田晴雄(千葉商科大学学長)

第III部

検証8 IT政策とインターネットの発展:インターネット前提社会の出発 村井純(慶応義塾大学環境情報学部部長・教授)

検証9 国土・都市政策:都市政策の転換 市川宏雄(明治大学専門職大学院長・公共政策大学院ガバナンス研究科長)

検証10 消費者行動:バブル崩壊後の致命的なタイムロス 袖川芳之(京都学園大学教育開発センター教授)

検証11 バブル崩壊後の政治:政治はバブルの発生とその崩壊にどう対処したのか 曽根恭教(政治学者、慶応技術大学大学院教授)

おわりに

目次を見ればお分かりのように、ジャーナリストなどが簡単に「失われた25年」とひとまとめにしてしまうと全く見えてこない側面が様々な専門家によって検証されています。それぞれの見解や結論・提唱には同意できるものもあれば、そうでないものもありますが、とにかく、どういうことがあったか、あるいはだれがどのようなことをしたのかという「出来事」を総括的に把握するには適した本だと思います。いつのどの政策がどういう結果をもたらしたかという検証部分は異論の出て来る余地はあるでしょうし、それに伴い、今後の課題の捉え方も違う意見の人は居ると思います。ずっとドイツに居た私にはそこまでの異論は出てきませんけど。何せ目まぐるしく変わる日本の首相すらきちんと把握できてない状態なので。 この25年間でドイツの首相は3人(ヘルムート・コール、ゲルハルト・シュレーダー、アンゲラ・メルケル)だけですから、日本政治の目まぐるしさがよけい際立って感じられますね~。