徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

ドイツ・ベルリン州市議会選挙~東西差未だ歴然

2016年09月19日 | 社会

2016年9月18日はベルリン州の市議会選挙でした。ベルリン州はベルリン市一市のみからなる州です。そのため市議会イコール州議会となります。

選挙結果(全体)

さて、以下は選挙結果です。国民政党と呼ばれるSPD(社会民主党)とCDU(キリスト教民主同盟)の得票率が他政党とほとんど変わらないくらいまで下がっているのが特徴的です。CDUの得票率17.6%は史上最低レベルです。

AfD(ドイツのための選択肢)は今年州議会選挙のあった他州と比べると、得票率はそれほど伸びませんでした。投票率は66.8%で、前回(2011年)より改善されています。

SPD(ドイツ社会民主党)  21.6%
CDU(キリスト教民主同盟) 17.6%
Grüne(緑の党) 15.2%
Linke(左翼政党) 15.6%
海賊党 1.7%
FDP (ドイツ自由民主党) 6.7%
AfD(ドイツのための選択肢) 14.2%
その他 7.4% 


2011年の得票率との比較:

 
ベルリン市議会政党別議席獲得数(全160議席):
 

東ベルリンの結果(投票率66.6%、前回比+8.8%ポイント)
 
SPD(ドイツ社会民主党)  19.3%
CDU(キリスト教民主同盟) 13.1%
Grüne(緑の党) 12.6%
Linke(左翼政党) 23.4%
海賊党 1.9%
FDP (ドイツ自由民主党) 4.0%
AfD(ドイツのための選択肢) 17%
その他 8.6% 
 
 
 
政党ごとの得票率を東西ベルンに分けてみると、ベルリンは壁崩壊後27年経っても、未だに分断された都市であることが浮き彫りにされます。西ベルリンではSPDが最大政党であるのに対して、東ベルリンでは旧東独政権党の後継政党である左翼政党が最大政党となっています。また、AfDの得票率も東の方が約5%ポイント高くなってします。

西ベルリンの結果(投票率67.1%、前回比+5.1%ポイント)

SPD(ドイツ社会民主党)  23.2%
CDU(キリスト教民主同盟) 20.9%
Grüne(緑の党) 17.1%
Linke(左翼政党) 10.1%
海賊党 1.6%
FDP (ドイツ自由民主党) 8.6%
AfD(ドイツのための選択肢) 12.1%
その他 6.4% 

 
 
 
希望する連立政権:
SPD/左翼政党/緑の党 44%
SPD/CDU/緑の党 32%
SPD/CDU/FDP 28%
SPD/緑の党/FDP 21%
 
 
 
AfD(ドイツのための選択肢)投票者分析
 
AfD投票者を職業別にみると、労働者が25%で、最大グループとなっています。次に公務員16%、会社員12%、自営業12%。
 
年齢別にみると、45-59歳及び60歳以上のグループが多くなっています。
 
AfD投票者には高学歴者の割合が少なくなっています。
基幹学校卒 18%
中等教育終了(職業学校卒) 21%
大学入学資格 11%
大学卒 7% 
 
AfD投票者の2011年の投票先を見ると、半数近くの45%がその他または無投票だったことが分かります。
SPD(ドイツ社会民主党)  12%
CDU(キリスト教民主同盟) 22%
Grüne(緑の党) 2%
Linke(左翼政党) 7%
海賊党 10%
FDP (ドイツ自由民主党) 2%
その他または無投票 45%
 
 
投票先の決定により重要だったのは、ベルリン州政治39%に対して国政政治54%となっており、AfD投票者にとっては地元の政治より国政政治の方が重要だったことが浮き彫りになっています。
全投票者では、ベルリン州政治の方が重要と回答した人が63%で、国政が投票先決定に影響したという人は32%にとどまりました。各州の代表が連邦参議院において、内容によっては国政に参加するので、国政を投票先決定の基準にするのは必ずしも間違ってはいないのですが、AfD投票者たちの場合、ただ単にメルケル首相の難民政策への不満を表すためというのが主な動機になっているようです。
 
難民問題は投票先決定に重要?:
全体
はい 57%
いいえ 42%
 
AfD支持者
はい 98%
いいえ 2% 
 
98%というのは本当に圧倒的な数字です。AfD投票者たちは今回のベルリン市議会選挙で、難民問題という市議会では殆ど影響を及ぼすことができないことで投票先を選んだことになります。地方政治は関心が薄かったか、悪く言えば、視野狭窄が起こっていたと言えます。
 
重要な問題(全体)
難民/統合 44%
住宅市場/家賃 30%
学校/教育 23%
交通 14%
犯罪 13% 
 
 
 
東西ベルリンでは共通点と相違点のどちらが多い?
 
共通点 54%
相違点 42% 
 
今回初めて、「共通点の方が多い」という回答が「相違点の方が多い」という回答を上回りました。上の投票結果で見るとまだまだ東西の違いは顕著ですが、それでも「共通点の方が多い」と言えるだけ、東西ベルリンの風通しが良くなっているのかも知れません。
 
参照記事:ZDFホイテ、2016.09.19、「ベルリン選挙の分析

書評:横山秀夫著、D県警シリーズ『陰の季節』&『刑事の勲章』(文春e文庫)

2016年09月19日 | 書評ー小説:作者ヤ・ラ・ワ行

ドラマ化及び映画化で話題となった『64(ロクヨン)』のD県警シリーズは、この『陰の季節』という短編集が第1弾でした。『刑事の勲章』は同シリーズ第4弾の短編。

『陰の季節』は表題作他、『地の声』、『黒い線』、『鞄』の3作が同時収録されています。どの作品にも警務部の『陰の人事部長』と呼ばれる二渡真治が登場します。

表題作では二渡真治が主人公で、天下り人事で、1人天下り先での居座りを希望した人がいたので、今年勇退することになっている人の天下り先が無くなってしまうことになり、問題発生。二渡は事情を聴き、説得するために元ベテラン刑事の元に行きますが、けんもほろろにあしらわれてしまいます。さて真相は?

『地の声』では、監察官の新堂が主人公で、パブのママと浮気しているというタレコミのあった最年長警部を調べることに。彼が警部から警視に昇進するチャンスは今年が最後なので、新堂は中傷誹謗のせいでそのチャンスが無くなってしまうのは気の毒に思い、良心的に調査しようとしますが。。。

『黒い線』では若い婦警が突然無断欠勤するところから始まります。失踪?事故?47人の婦警たちを束ねる警務課婦警担当係長七尾友子は、未だ出勤してこない平野瑞穂巡査の行方を追います。平野瑞穂はひったくり犯の似顔絵をそっくりに描いたと新聞記事になったばかり。逆恨みを買った可能性もある。。。

『鞄』の主人公・警務部秘書課課長補佐・柘植正樹は県議会の「議会対策」が職務。定例議会における一般質問の内容をあらかじめ調べて、回答を用意するために飛び回っていましたが、ある保守系議員が「爆弾」質問を用意しているという噂を聞きつけ、その質問の内容を知ろうと右往左往することに。

どの作品も県警内の人事に関わることがテーマで、典型的な警察小説とは言えないストーリーですが、サスペンス要素は十分にあり、なかなか面白かったです。警察は良くも悪くも日本の「カイシャ」なのだなと納得してしまう内容です。


『刑事の勲章』は電子書籍オリジナル短編で、『64(ロクヨン)』に連なる「D県警シリーズ」未収録作。警務・観察を経て、いきなりN署の刑事官に配属された上原勇三が主人公。畑違いの人事に二渡の真意がつかめずに悶々とする上原。配属先ではOB会に事件の進捗をつつかれ、部下には憐憫と共に無視される有様。やはり懲罰人事だったのでしょうか?

ちょっと主人公が気の毒な感じですが、ストーリーとしてはあまり面白くなかったです。

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書評:横山秀夫著、『第三の時効』(集英社e文庫)

書評:横山秀夫著、『64(ロクヨン) 上・下巻』(文春e文庫)