みちくさ茶屋

いらっしゃいませ。どうぞごゆるりと。

読書記録2006-2

2006-01-25 | book
7「博士の愛した数式」小川洋子 充実度★★★★★
すばらしい! 文句なしの五ッ星でございます。
テレビで映画の予告を何度も見てしまったせいで、
どうしても深津絵里ちゃんと寺尾聰様が浮かんで仕方がなかった。
途中からは、もうそのつもりで読んだ。だから、映画を観終わったような気分です。

事故が原因で、80分しか記憶が保てない博士と、家政婦である「私」、
そして「私」の息子であるルート。
「私」を通して見える、博士とルートとのやりとりがすごくいい。
博士が自分の息子を抱きしめてくれたのがうれしかった、というの、わかるなあ~。
私も、通りすがりの人がこうたろうを見て微笑んでくれるだけで幸せになるもんね。

終盤で、「お? もしかしてまた、最近よくある、愛する人が死んで
お涙ちょうだいってパターン??」と思ったのだが、ぜんぜんそうじゃなかった。
小川洋子さんって、「きれいだけど残酷な世界を描く人」というイメージが
あったんだけど、(この本もある意味そうかもしれないけど……)
各々事情を抱えながらかかわっていく、慈愛に満ちた人間関係や、
数学における発見と驚きの喜び、そして何よりも、無条件に子供を愛する博士の姿に
ところどころ胸がじんわりと熱くなった。
ラストでのルートの成長ぶりがまた、もう……

通勤電車の中で読んでいたんだけど、あんまりおもしろくて
「ああ~っ、電車降りたくないー!」と何度も思った。
最後の一文字まで感動したのは本当に久しぶり。
切れ味のいい終わり方で、読んだあとしばらく余韻にひたってしまいました。
まだ年があけて1ヶ月もたっていないけど、早くも私の中では今年のベスト5入り確定です。

あと、このお話のキーワードは「江夏」ですね。
小川さんの好みなのだろうか? 野球には疎い私だけど、興味がわきました。