細野豪志ブログ

衆議院議員 細野豪志の活動報告です

食糧安全保障

2008-02-02 16:44:14 | 国会活動
今週の国会はめまぐるしく動きました。

衆議院での予算委員会での審議に続き、ブリッジ法案を巡る激突と撤回。後半は中国餃子で翻弄されました。当分は、ガソリン税と併せて輸入食糧の安全が国会の大きな論点になりそうです。

負け惜しみのようですが、月曜日の予算委員会で、最初に私が取り上げたいと思っていたのが、輸入食糧の安全の問題でした。昨年のミートホープ、白い恋人、赤福と続いた食品偽装を受けて、「消費者の立場」を強調する福田総理に、「輸入食糧の問題を忘れてませんか?」と問い掛けるつもりでした。道路の対決質問で吹っ飛んでしまいましたが・・・。


輸入される食糧は、農水省と厚生労働省の二重のチェックを受けます。まず、指摘をしなければらないのが検疫体制の不備。

国際空港や港には、農水省所属の植物防疫官が865人(平成19年度末定員)おり、害虫などのチェックを行っています。ここでは、家畜用の飼料や、観賞用の植物、ペットの動物なども同様の扱いを受けます。ちなみに、加工食品は、農水省のチェックは受けません。

食糧としての適正、すなわち残留農薬などのチェックは、厚生労働省の食品衛生監視員が行います。ちなみに、こちらは全国に合計334人しかいませんので、実際にチェック出来ているのは輸入食糧の1割弱です。どうやら、加工品は書類審査でほとんどフリーパスだったようです。

国民の食糧の過半を輸入に頼っている現状を考えると、この検疫体制はいかにも弱すぎます。害虫のチェックを865人でして、農薬のチェックを334人でやっているというのもいかにもアンバランスです。かつて、鳥の間で蔓延している間は農水省、人が感染したら厚生労働省という役割分担で、鳥から人への感染対策が落ちてしまっていた鳥インフルエンザ発生のときのことが思い出されました。

役所的には、農水省と厚生労働省とは役割が違うということになるのでしょうが、国民の側から見ると、協力してやってくれということになります。

両者を統合して、検疫体制の大幅な強化が必要です。これは政治決断でしょう。


世界の食糧事情は、この一年で激変しました。バイオエタノールのブームと、旱魃などの影響による輸出国の政策転換で、穀物価格は急騰しています。

米国では、とうもろこしの3割、ブラジルではさとうきびの5割をエタノールに割いています。食糧自給が逼迫している中で、食べ物をエネルギーに変えているのですから、狂気の沙汰としか言いようがありません。

もう一つ注目すべきは、各国が食糧輸出の規制を始めたことです。中国、インドなど、食糧輸入国に転じている人口爆発国はもちろん、ロシアやアルゼンチンなどの食糧輸出国でも、小麦やとうもろこしなどの輸出に税を課したり、枠を設けたりする動きが出ています。

日本が最も頼りにする国の一つ、豪州も干ばつで日本への小麦の輸出に支障を来たすようになってきました。数年前は考えられなかったことです。

各国は、いざとなったら(戦争、飢餓など)輸出よりも国内供給を優先する姿勢を鮮明にしています。

1980年7月2日。総合安全保障研究グループは、委嘱者である故大平総理に報告書を提出しました。報告書は、私も薫陶を受けた高坂正堯教授を中心にまとめられました。

「食糧安全保障」の項目に、以下の記述があります。

「自助努力としては、緊急時の食糧増産が可能となるよう、高い潜在生産力の維持のほか、国から消費者レベルまでの備蓄の拡充、緊急時の流通システムの検討が必要である」

当時は、時代錯誤とも言われた記述ですが、現在の我が国の食料政策に変更を強く迫っているように思えてなりません。

耕作放棄地10%(山間地は15%)、基幹的農家の平均年齢は64歳。米価の下落と燃料高が追い討ちをかけています。農家の皆さんと話していると、我が国の農業が存亡の危機に立たされていることを痛感します。

「農業は石垣と同じだ。大きい石と小さい石が組み合わさらなければ、成り立たない」先日、議員食堂で某ベテランと話をしていて、含蓄のある言葉を耳にしました。大規模化をひた走り、小規模農家を切り捨てる自民党農政は間違っています。

食の安全に国民の関心が向いている今こそ、農政を正面から語るべきときだと考えます。


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