細野豪志ブログ

衆議院議員 細野豪志の活動報告です

安倍総理と柳沢大臣の「救済法案」

2007-05-30 12:55:09 | 国会活動
再び、厚生労働委員会がもめています。

先週、「消えた年金」を黙殺するかたちで、社会保険庁を日本年金機構に衣替えする法律を強行採決しておいて、今更、「救済法案」を出してくるとは。法案の中身も、時効を延長するだけで、被害者が保険料納付の事実を証明しなければならないことに変わりはありません。

年金が消えた責任は、社会保険庁すなわち政府にあります。先日、「私が悪いのか?」と逆切れしていた安倍総理は、何か勘違いをされているとしか思えません。「救済」されるのは安倍総理と柳沢大臣という法案に、国民が納得するとは思えません。

これから党首討論。ここでも、消えた年金が議題となります。

「消えた年金」すら救済されない国民と、定年退職後も天下り先が用意されている国家公務員

2007-05-27 00:04:00 | 国会活動
一昨晩(正確には昨朝)は、「朝まで生テレビ」で憲法論議をしてきました。民主党の主張を踏まえつつ、与党からも社共からも(もちろん評論家からも)批判される立場になる憲法問題は、我々にとって難しい議題です。参議院選挙を通じて、ここは逃げずに正面から論争すべしとのスタンスで、気張ってきました。辻元さんの勢いに、少々押された感はありましたが、何とか最低限の線は守れたかと思っています。

国民投票法が成立したことで、憲法は中身の論争に入りました。改正の是非ではなく、どのような改正であれば是で、どのような改正であれば非なのかが、問われています。しかし、自公のスタンスが全くバラバラな中で、安倍総理は憲法の何を争点にしようとしているのでしょうか?

大学時代は、憲法界の大御所である佐藤幸冶教授のゼミ生であった私ですが、国会議員になった後は、中曽根元総理と土井元議長の不毛の論争を見て、民主党内の憲法論議に参加するにとどめてきました。これをきっかけに、憲法論争に積極的に関与しようと思います。


さて、国会は最終盤です。昨晩、社会保険庁を日本年金機構にする法案が、厚生労働委員会を通過しました。これで、「消えた年金」の責任から政府は逃れ、被害者は見捨てられるということになるのですから、とんでもないことです。

社会保険庁の職員は、日本年金機構の職員になることで、天下りの制限もなくなるというのですから、これまたとんでもない。

それと平行して、天下りバンク法案の質疑が、内閣委員会で着々と進んでいます。法案が通れば、定年退職した国家公務員までもが、天下りのあっせんの対象になる可能性が出てきます。「消えた年金」すら救済されない国民と、定年退職後も天下り先が用意されている国家公務員。一体、わが国の政治は、誰を向いて政治をしているのでしょうか?

「消えた年金」が数の力で押し切られるなら、「天下りバンク」だけでも、何とか国民の怒りで、成立を阻止したいところです。今週が山場となります。

エキストラ募集

2007-05-23 09:04:13 | 地元
国会は、「天下りバンク」と「消えた年金」で、最後の攻防が激しさを増しています。民主党が長らく要求してきた政治とカネの予算委員会審議も、本日、行われます。

そんな中、今日のひとことは、国会を離れて、地元のロケの話題です。私が応援しているフィルムコミッション伊豆の呼びかけで、柴咲コウ主演の「少林少女」という映画のエキストラの募集です。5月30日(水)、富士市内でロケに参加していただける方を募集中です。登録は、HPから。ふるってご応募下さい。

天下りチェーン店の全国展開

2007-05-19 21:54:38 | 国会活動
今日は、天下りバンクの問題点を少々。政府案の問題の一つは、天下りの事前規制が放棄されていていることです。

これまで政府は、退職前の官職と密接に関係する営利法人への再就職を、2年間禁止してきました。この規制の対象とならない独立行政法人に一旦天下った後、2年を経過してから営利法人に天下る、いわゆる「迂回天下り」によって、この規制のすり抜けが横行してはきましたが、天下りによる官民の癒着を予防する唯一の歯止めが、この規制であったことは、紛れも無い事実です。

ところが、今回提出された政府案において、この2年間の天下り禁止規定は、削除されています。この法案が通れば、たとえば、金融機関を監督する立場にある金融庁の職員が、退職後監督先であった銀行に天下ることも可能となります。今回の改正は、法律が制定された昭和22年から行われてきた天下りの規制の流れを、解禁へと180度転換するものです。

官僚の天下りがこれだけ大きな問題となっているいま、天下りを解禁する法案をつくろうという考えが、全く理解ができません。

独立行政法人や特殊法人、非営利法人に対する天下りも、これまで同様、制限されません。

渡辺大臣によると、天下り先は「有識者会議で検討」とのことですが、天下り先をどこまで制限するかという本質的な問題を丸投げするようでは、話になりません。


もう一つは、独立行政法人や特殊法人などからの天下りが制限されていないことです。

緑資源機構の問題では、所管である農林水産省から緑資源機構への天下り、緑資源機構から関連法人への天下り、それに伴い補助金が国から緑資源機構へ流れ、さらにその下の関連法人へ流れている構図があきらかになりました。ヒト・カネが国・独立行政法人・関連法人へ流れるまさに「三位一体」の構造が典型的に現れた例です。

政府提出の法案では、独立行政法人や特殊法人からの天下りは、規制対象になっていません。これでは、税金を浪費してきた「三位一体の関係」は、到底崩れません。

別途提出されている政府法案では、不祥事続きだった社会保険庁は、特殊法人である日本年金機構に衣替えされます。これまで、天下りが規制されてきた社会保険庁の職員は、特殊法人になることで、天下りが全面的に解禁されます。


天下りバンクの斡旋対象となる退職国家公務委員は、毎年5000人近くになると予想され、内閣府に相当大きな組織ができそうです。

政府提出法案を見て最も驚いたのは、組織的に天下りを斡旋するために、全国に天下りバンクの支所なるものが設置をされることです。天下りを、全国チェーンで、展開しようというわけです。悪乗りが過ぎます。なぜ、ハローワークの活用を考えないのか、理解に苦しみます。

支所の職員が非公務員になり、支所に官僚が天下る。また、関連公益法人やファミリー企業が誕生し、支所の職員がそこに天下るというような、ブラックジョークのような状況が生じることも考えられます。

天下りバンク

2007-05-18 21:32:33 | 国会活動
いよいよ、天下りバンクの審議が本格化です。

火曜日には、久々に本会議で登壇しました。天下り法案の代表質問です。後半国会の争点でもある天下り法案の総理入りの質疑での登壇ということですので、ありがたいチャンスを頂いたと思っています。再質問にも初めてチャレンジし、かなり気合を入れて挑んだのですが、少々空回り気味で、今ひとつの出来ばえでした。答弁の中では、この法案の肝となる新人材バンクのあり方を、渡辺大臣が、すべて有識者会議に丸投げしていたのが気になりました。

今日は、本会議に続き、内閣委員会で天下り法案で質問しました。再び「有識者会議で検討します」という答弁を繰り返す渡辺大臣に対して、今度は、私も譲らずがんばり、何回か審議が中断しました。永田町用語で、いわゆる「止まる」というやつです。審議を「止めた」のは、久々です。委員会質疑が中断するのは、決して喜ばしいことではありませんが、審議が不十分なまま法案を通すことは許されませんので、時として納得するまで引き下がらずにがんばることも必要になります。国会審議も最終局面。後半国会のキーワードは間違いなく「天下りバンク」です。

もう一つのキーワード候補は「消えた年金」となりそうです。国民の皆さんの大切な年金情報を、散逸させた社会保険庁を、日本年金機構という特殊法人に衣替えすることで、逃げ切ろうというのですから、許せません。ここが、元祖行革政党・民主党のがんばりどころです。

ダブルヘッダー

2007-05-12 00:47:51 | 国会活動
怒涛のような一週間が終わりました。経済産業、外務、内閣委員会と質問3回。特に、金曜日は久々のダブルヘッダーとなりました。生まれて初めて味わう時差ぼけ(歳を取ったということでしょうか?)と相まって大変ではありましたが、充実した一週間となりました。質疑の様子はHPよりご覧下さい。

締めくくりの金曜の夜は、富士市で女性の皆さんの集まりである風の会があり、多くの方から叱咤激励を頂きました。週明けは、いよいよ今国会の最期の山場・天下り法案が審議入りします。多くの方に支えられていることを忘れず、全力を尽くしたいと思います。

サルコジ大統領誕生

2007-05-07 22:06:44 | 外交
先ほど帰国しました。パリの投票日。投票所にも足を運んでみましたが、昼間はどこも静かなもので、本当に選挙かいなと感じるほどでした。雰囲気が一変したのは、夜7時をまわったころです。両候補のプラカードを持った群集が集まりだすと同時に、機動隊が中心部に集結し主要道路は封鎖されました。夜中には、投石する群集に対して機動隊が催涙弾で応戦する騒ぎになったそうです。

8時半に市内を離れた私が結果を知ったのは、空港のテレビでした。カフェ店員の黒人男性に話しかけると、「最悪の結果だ」とはき捨てるように言っていました。「戦い終わって新しい指導者の下で団結して・・・」とならないのが、今のフランスです。

サルコジ大統領によって、ロワイヤル氏が訴えた「連帯」がフランスにもたらされる日は来るのでしょうか。

核大国 フランス、そして日本

2007-05-06 15:54:43 | 外交
フランスでのすべての日程を終えて、帰国を待つのみとなりました。一週間の日程を振り返りながら、エネルギー問題について報告します(写真はエネルギーの国際的な大御所IEAのマンディル事務局長、背景はエッフェル塔)。

フランスは、発電の8割を原子力に頼る「核大国」(核兵器も含めて自称しています)です。3月1日のメルマガにも書きましたが、地球温暖化の現実を前に、原子力にはフォローの風が吹いており、フランスもその例外ではありません。

振り返って、わが日本。今回の臨界事故隠蔽に象徴されるように、「原子力は本当に大丈夫か?」という国民の声に、政府と原子力発電を行っている企業が応えきれていません。

再生可能エネルギーを重視する立場から、原子力を過渡的なエネルギーと位置づけてきた私が、考えを整理する必要性を感じたきっかけは、実は環境ではなくて、核兵器と原発の国際的な拡散です。今回の渡仏の目的は、その方向性を決めたかったからです。

今回、フランスの国会議員、関係省庁や国際機関の幹部、民間事業者と会って、相当突っ込んだやり取りを行うことで、私なりに方向性を出すことができました。


原発を巡る目下の国際的な最大の課題は、核燃料サイクルの確立にあります。ウランの高騰が、その流れに拍車をかけています。原発を開始する、もしくは初期段階の国は、「ウランの発掘から、濃縮・加工、発電・送電・売電」に至るフロントエンドに関心があり、原発の規模の拡大している日仏英米などでは、「核燃料の再処理、MOX燃料化、(再び)濃縮・加工から発電」に至るバックエンドへの関心が高まっています。

フランスは、核燃料サイクルをほぼ確立している唯一の国です。その中核的な役割を担っているのが、原子力庁(CEA)とAREVA社です。原子力庁は、日本で言えば公社のよう組織で、原子力発電の推進役だけでなく、技術開発の実施、核の軍事利用まで所管する人員1.5万人の巨大組織です。AREVA社は、ウランの採掘から再処理、MOX燃料化まで、核燃料サイクルを実施しているフランスの国策会社で、(政府の持ち株比率は役8割)。こちらも、全世界で6.1万人の人員を抱えています。

フランスの原子力政策の最大の特徴は、国が全責任を持って、推進役を担っていることにあります。日本との違いとして、知事が官選になっていることも手伝って、自治体の反発が少ないことがあるのですが、私は、国民的議論の重要性を強調しておきたいと思います。政府と議会の姿勢には、大いに学ぶべきところがあります。

間もなく結果が出ますが、ロワイヤル候補は、選挙運動中に原発について何度か政策変更の可能性に言及しました。それに対し、原子力を担当する官僚も、原子力庁の担当者も、「そんなことが出来るわけがない」と、自信満々でした。分厚い官僚機構(これは評価の分かれるところですが)と国民の信任も、原発の推進に重要な役割を果たしています。


フランス南部・マルクールにあるAREVA社のMELOX工場(MOX燃料工場)を見学することが出来ました。ちなみに、近郊は、風光明媚なリゾート地、そしてワインの産地として知られているのですが、本題から外れますので、ここではおきます。

特筆すべきは、AREVA社が国際的なエネルギー需要に応えていることです。MOX化されている燃料の7割はフランス国内、3割は海外のものです。中部電力を初めとした日本の電力会社も、ここでMOX燃料の供給を受ける契約を結んでいます。AREVA社は段階的にその処理レベルを上げていますので、海外への燃料供給は今後更に増えることになります。これは、ラ・アーグの再処理工場も同様です。

興味深いのは、米国の核弾頭に搭載されていたプルトニウムのMOX燃料化を成功したことです。その燃料は、すでに米国の原発で使用されています。核兵器から出るプルトニウムのMOX化は、使用済み燃料のそれと変わりませんので、核軍縮が加速すれば、ここがその拠点となる可能性も秘めているわけです。

日本でも、青森県の六ヶ所村に再処理工場とMOX燃料工場が出来ますが、国内処理に特化していますので、フランスとは根本的な位置づけが異なります。原子力庁の国際部門の担当者には、「自国の核兵器のMOX化もやったらどうか」とチクリと言ってきましたが、実績を前にすると説得力はイマイチです。もとより、NPT体制に象徴される国際的な枠組みは、決して平等なものではありえませんが。

6カ国協議の最大の焦点は、北朝鮮の核開発能力の無力化です。それすらも危ういですが、仮に北朝鮮が約束を履行したところで、すでに保有しているプルトニウムと濃縮ウランをどこかで処理しない限り、わが国の脅威は去りません。再処理・MOX燃料化をやるのであれば、そこまで視野に入れるべきではないか。核保有国のフランスより、Mox for peaceというキャッチフレーズが似合うのはわが国です。


フランスが苦労しているのが、高レベル放射性廃棄物の最終処分場と、次世代の原子力発電の技術開発です。

意外だったのは、核大国を自任するフランスでも最終処分場が悩みの種であったことです。1990年代から候補地を探していますが、未だに決まっていません。関係者は、核大国の責任で何としてもつくると口を揃えていましたが、地層処分の是非については、原発に理解のあるフランスの世論ですら二分しています。日本の東洋町のことを、さかんに質問してきました。

帰国後、日本では最終処分場に関する法案を審議します。品の良い表現ではありませんが、トイレのないマンションをつくってしまった(売ってしまった?)責任を取るのは当然のことです。ただ、最終処分場の場所ついては、急がないほうが良いのではないかという思いが残りました。東洋町であれだけのことがあったのですから、技術開発、国際協調の動きなどを見ながら、ここは少し時間をかけるのが得策だと考えます。

技術面での解決の一つの方向性が、廃棄物を格段に減らすことのできる高速増殖炉の開発です。今回、同じくマルクールにあるフェニックス原子炉も見ることが出来ました。先日、視察した敦賀のもんじゅと同種の高速増殖炉の実験炉です。もんじゅも古く感じましたが、1974年に運転を開始したフェニックスは、それ以上に老朽化が進んでいます。

開発にかかる膨大な時間とコストには、各国が悩まされています。第四世代の原発の開発が始まってすでに40年。商業発電に至るには、まだ相当の時間がかかります。2年後には、フェニックスは停止され、フランス国内には高速増殖炉の稼動施設はなくなります。フランスにとって、この分野での日本の協力は欠かせません。


最後に、アジア地域での国際協調の必要性について言及して、報告を締めたいと思います。欧州には原子力発電に関する地域協力の枠組みとして、ユーラトムという組織が存在します。ウランの安定供給を目的として50年前に発足した機関ですが、核燃料サイクルや最終処分について協調も視野に入っています。

「アジアトム」構想は、これまでも何度か提唱されてきたのですが、実現には至っていません。アジアでのエネルギー需要が拡大し、核兵器の脅威が高まっている今こそ、アジアトムを設立すべきときです。最大のウラン産出国であるオーストラリアも入れて、パシアトムも検討に値します。

アジアにおいてわが国は、原発に関する技術・実績とも圧倒的に先進的立場にあります。しかし、すでにアジア地域では、ウランの争奪競争は激化しています。また、ウラン濃縮、核燃料サイクル、最終処分など、あらゆる施設を国内ですべて抱えることは、実質的に不可能です。アジアで原発の開発を目指す国が出るたびに、核拡散の脅威に悩まされる状況は、わが国にとって悪夢そのものです。

原子力庁のある幹部に、アジアトム構想を実現するために大切なことは何かと、ユーラトムの経験を踏まえて、アドバイスを求めました。彼は、少し考えてから、「最も大切なのは、運命を共有する意思」だとこたえました。エネルギー・環境、そして核拡散。これらの面で、わが国とアジア諸国は運命を共有しています。必要なのは、厳しい現実を乗り越えようとする政治的な意思なのかも知れません。

フランス大統領選挙レポート

2007-05-03 05:22:25 | 外交
フランスの訪問日程も前半が終了しました。これまでの海外でのヒアリングと言えば、数人で行うため、先輩議員の質問が終わるのを待って最後に発言というパターンでしたが、今回は一人ですので、何しろ密度が違います。政府の担当者、研究者、国際機関の担当者と、かなり突っ込んだ意見交換ができました。個別のやり取りをご紹介したいところですが、相手の立場がありますので、そういうわけにもいきません。

明日(3日)から、施設の視察と企業担当者との面談がありますので、一段落した時点で、まとめて報告することにします。


今回は、大統領選挙についてレポートします。実は、今まさにフランスでは、サルコジ候補とロワイヤル候補とのディベートが行われています。最初の投票で候補者は4人から2人に絞られ、6日の日曜日に決選投票が行われる大統領選挙。クライマックスとも言えるディベートです。私の見立ては、ディベートの感想も踏まえて最後に書きます。


情勢に入る前に、うんちくを少々。フランスでは、大統領に権限が集中しています。初日に国民議会(衆議院に相当)を見学にいってきたのですが、大統領は議事堂に入ることはなく、答弁は首相を初め閣僚の役割になっています。最高権力者が国民の代表の前で発言する機会がないのは不自然に思えるのですが、モンテスキューの三権分立、ドゴール大統領の権限強化策などの歴史が積み重ねられ、フランス式の議会制民主主義が確立されて、こうなっているそうです。議会に姿を見せないにも関わらず、大統領には、議会の承認を得ずに法律を通す権限もあるというのですから、権限は絶大です。

面談した議員が、フランスの大統領を天皇陛下と比較していたのは、それだけ大統領の格を示しているのでしょう。ミッテラン大統領もシラク大統領も、左右立場は異なりますが、家父長的な威厳と、老獪さを持ち合わせているのは、フランスの大統領が持つ格と関係ありそうです。大統領選挙の投票率が80%を超えるのも、何となくうなずけます。


外務省の計らいで、1日にパリ市内のスタジアムで行われたロワイヤル候補を盛り立てる社会党の集会に潜り込むことに成功しました。フランス全土から動員をかけたらしく、会場一帯はバスと自家用車で大渋滞。昼間のメーデーの行事がほとんど行われておらず拍子抜けしていただけに、6万人(主催者発表)が参加した集会は壮観でした。写真は会場で撮ったものです。


ミュージシャンが盛り上げるお決まりのパターン(日本では政党の集会にメジャーなミュージシャンは来ませんが・・・)。マイノリティに混じって、中高生と思しき若い世代が参加していたのには驚きました。シラク・ドビルパン政権下で、疎外されてきた層が蜂起している印象です。

ボルテージが最高潮に達したところで登場したロワイヤル候補を、聴衆が熱狂的に迎えます。人だかりの中で、スタジアムを縦断する本人の姿を何とか捉えることができましたが、本人は疲労の色が濃く、弱々しい印象でした。握手の仕方、大衆の前に立った時の所作、表情などからは、カリスマ性は感じられません。

演説は1時間に及びました。労働者の権利と社会の融和を繰り返し訴えます。日本の民主党の立場よりも、はるかに労働者階級の立場を明確に代弁する内容です。スピーチライターの問題でしょうか、演説そのものが散漫な印象です。唯一、強いフランスを訴えた部分は、保守層の取り込みを狙ったものでしゅうが、候補者のイメージとのギャップが大きく、取り込みに成功しているとは思えません。

大量の移民を抱えるフランス社会。パリの街を歩いていても、「社会の融和」の必要性を感じるのですが、残念ながら、ロワイヤル候補は挑戦者としては力量不足との印象です。冒頭で書いたフランス大統領の立場を考えるとなおさらです。


さて、2時間のディベートの方は、後半に入りました。フランス語はさっぱり分かりませんので、内容は後で確認するしかありませんが、映像を見る限り、強気で押すサルコジ候補に、ロワイヤル候補が突っかかる場面が目立ちます。ロワイヤル氏の必死の巻き返しです。私はサルコジ候補、圧倒的優位と見ますが、大逆転があるのかどうか。


外交関係者と議論していても、両候補の外交政策は見えてきません。世界でもまれの知日派であったシラク大統領の後の日仏関係、シラク大統領が寛容な態度を貫いてきた対中関係、そして、イラク戦争で微妙な距離を維持してきた対米関係。大統領選挙の中で、外交論争はほとんど行われなかったのは残念です。

ただ、長く続いたシラク大統領の後で、新たな大統領と国民との関係は変化することになるでしょう。サルコジ、ロワイヤル両氏とも、国民議会に出てきて答弁する構えを見せています。実現するかどうかは不明ですが、国民との距離を縮めたいとの思いが両者にあるのでしょう。

私がフランスを発つ6日の夕方には、結果が出ます(米国の大統領選挙のようなことは絶対にないと、政府関係者は断言していました)。大統領選挙の結果とフランス国民の反応を見届けてから、帰国したいと考えています。