細野豪志ブログ

衆議院議員 細野豪志の活動報告です

特定秘密保護法案のスピード審議  岐路に立つ安倍政権

2013-12-03 20:24:13 | 国会活動

特定秘密保護法案の審議が山場を迎えています。

秘密を議論する時に忘れてはならないのは、政府の情報は国民のものであるという大原則です。民主党が情報公開法の改正を含む対案を出しているのはこの考え方に沿ったものです。

参議院に送られた政府案は、特定秘密の対象、第三者機関、秘密の期間のどれをとっても問題を抱えたままです。国会審議が紛糾し、各界から懸念が表明されている中で、安倍政権はなぜ会期内成立にこだわるのでしょうか。

戦前の秘密保護法制を調べてみました。特定秘密保護法案に類似するものとしては、1899年に成立した軍機保護法と、1941年に成立した国防保安法があります。前者は秘密の対象を軍事上のものに絞っているのに対して、後者は国家機密とされる情報全般を対象にしている点で、特定秘密保護法案と類似しています。

両法案ともに最高刑は死刑となっており、第三者機関は存在せず政府の裁量が大きかったため、国民を委縮させる効果を持ちました。秘密情報保護法案では最高刑こそ10年となっていますが、有識者の意見を聴くことが定められているだけで第三者機関の設置は明確になっていません。私が問題だと感じているのは、中身だけではなく、法案が提出されてからの期間の短さです。

軍機保護法が成立したのは日清戦争と日露戦争の間ですので、明治政府が軍備増強を行っている最中です。それでも、最初の法律が提出(1898年6月)されてから解散を挟んで再提出(1989年12月)し、成立(1899年7月)するまでに一年以上の期間をかけています。

 国防保護法案の提出は1941年1月29日。太平洋戦争開戦前夜で、もちろん日中戦争はとっくに始まっていますので戦時立法です。異例のスピード審議が行われ、衆議院では2月8日には全会一致で可決、貴族院では2月27日に可決し、提出から一ヶ月を経ずに成立しています。

 現在、議論されている特定秘密保護法案が国会に提出されたのは10月25日です。12月6日の会期末に参議院で可決されれば、一ヶ月強で成立することになります。戦時中と同様のスピードで審議を急ぐ理由はどこにあるのでしょうか。

 法律の中には、特区法案のように試みでやるべきものと、一旦導入されると取り返しのつかないものがあります。特定秘密保護法案は後者に属しており、慎重な議論が必要です。このまま突き進むのか、一旦立ち止まるのか、安倍政権は岐路に立っています。


高校授業料無償化の所得制限について考える。ペイアズユーゴー原則を教育現場に持ち込むべからず

2013-11-13 14:47:24 | 国会活動

文科委員会での質問が終わりました。高校授業料無償化に所得制限をもうける法案についてです。質疑後に法案は可決されました。高校生の学びを社会が支える仕組みが崩れるのは残念です。

私が問題にしたのは、年収910万円以上(上から2割)の世帯の子どもに充てていた予算を削り、今後は授業料を有料にして、その削った分を年収250万円以下(下から12)の世帯の子どもに回し、今までの分に上乗せして支給するという仕組み。高校生にもなれば本人は分かりますので、クラスの中で階級ができてしまう懸念があります。低所得者対策には賛成ですが、財源は新たに確保すべきです。ペイアズユーゴー原則は国家の論理。学校に持ち込むべきものではありません。

もう一つは、前年の所得で判断するので、親の失業や死別などの新たな事情が生じた場合に、対応できるか定かでない問題です。学校の設置者である都道府県が判断するとのことですが、個人のリスクを社会でカバーするという理念は薄れたと言わなければなりません。

米英仏などの先進国は、19世紀から戦時中には、高校の無償化を実現しています。もちろん所得制限はありません。貧しくとも、教育にお金をかけたわけです。日本の高校生の年齢は、義務教育になっている国も数多くあります。高校の授業料を「まずは家庭の責任に」という考えに私は賛成できません。


慎泰俊さんとの出会いから 児童養護施設議員連盟設立

2013-10-31 16:27:14 | 国会活動

児童養護施設の議員連盟を立ち上げました。きっかけは慎泰俊さんとの出会いです。慎さんと一緒に施設を訪れて、私も行動を起こそうと思いました。多くの児童養護施設の建物は古く、親に頼れない子供たちの経済状況も良くありません。施設の職員の皆さんは懸命に働いていますが、小さい子どもたちの面倒を十分に見ることができません。

最近は、児童虐待が原因で施設に入る子どもたちが増えています。写真は児童虐待防止のシンボルであるオレンジリボンです。11月は児童虐待防止月間。私は胸にオレンジリボンをつけています。

施設に関係している人たちが口を揃えて言うのが、幼児期に親からの愛情を受けていない子どもたちに必要なのは、信用できる大人がいるということを感じる機会であり、自らの人生は生きる意味のあるものだ感じる機会だということです。しかし、施設に関わる職員が子どもたちに密に関ることのできる配置を満たす公費の支出がなされていません。

なぜ、ここまで児童養護施設が放置されてきたのか。理由は明確です。これまで、票にも金にもならない児童養護施設に政治が目を向けてこなかったからです。「児童養護施設にお金をかけることは未来への投資だ」という慎さんの言葉が耳に残りました。議員連盟には、票と金という問題を超えて活動する民主党のメンバーが集まったと思います。

職員配置だけではなく、里親の確保、就職支援など課題は山積していますが、一歩でも二歩でも前に進めるべく、取り組もうと思います。


双葉郡教育復興ビジョン 文部科学委員会として

2013-10-22 14:21:19 | 国会活動

国会での本格的な論戦が始まりました。私は、今国会から文部科学委員会に所属することになりました。これまで、原子力、海洋、宇宙など、「科学技術」の分野には関わってきましたが、「文部」すなわち教育政策への関わりは多くありませんでした。そんな私が、文部科学委員会を志願したのには理由があります。

何としても実現したいと考えているのは、福島県の双葉郡に良い学校をつくることです。福島復興のカギは、子どもたちが元気に育つ環境ができるかどうかにかかっています。政府与党の時には、食品の検査体制や健康管理体制の整備などに取り組んできましたが、浜通り、特に双葉郡にはなかなか子どもたちが戻ってきません。マイナスを取り除くだけではなく、プラスをつくらない限り状況は変わらないでしょう。

故郷を離れざるを得なかった双葉郡の中高生の中には、サテライト校で授業を受けている子どもいれば、新天地で学校に通っている子どももいます。福島県では、双葉郡教育復興ビジョンを策定し、そうした子どもたちが通うことができる中高一貫高校(当初は高校のみの可能性が高い)を新設すべく準備を進めています。開校は平成27年度。一年半後というのは厳しい日程なのですが、震災から4年が経っていますので、これ以上遅らせることはできません。これまでも福島や文部科学省の関係者とは協議してきましたが、27年の開校に向けてこれからが正念場ですので、開校を国会から全力でサポートしたいと思っています。

新しい学校では、勉強はもちろん、文化芸術、スポーツで一流の指導を受けられる体制を整えるべきだと思っています。将来的には、来年4月からスタートする予定のスーパーグローバルハイスクールに指定することで、世界に通用する人材を育てることもできるでしょう。先日、いわき総合高校の高校生と話して改めて感じたのは、厳しい困難を乗り越え、福島から傑出した人材が出るだろうということです。原発事故の収束に責任のある私には、それをサポートする責務があります。

 

もちろん、文部科学委員会に所属するからには教育全般に関わっていきます。民主党の文部科学部門を背負ってきた鈴木寛氏の分まで頑張らねばなりません。特に関心を持っているのは、演劇、音楽、歌舞伎、落語などの文化についてです。一流の文化に触れることで、私たちは自らの人生や社会とのつながりについて考える機会を得、社会の一員としての根っこを確立することができるようになります。そうした機会は、どのようにすれば年齢や地域を問わず提供できるのか、考えたいと思っています。

教育には、私たちが目指す「地域主権」「新しい公共」「共生社会」「社会的包摂」をつなぐ力があります。民主党は、コミュニティスクールを増やし、地域住民が学校運営に関わることで強くて柔軟な地域社会をつくることを目指しています。ここから腰を据えて、綱領に示したビジョンの具体化にも取り組みたいと思います。


第二幕に向けて、出発の日

2013-08-21 23:05:45 | 国会活動
参議院選挙からひと月が経ちました。選挙総括を行いながらではありますが、等身大の地元活動と日常生活に戻ることができ、今後の活動について考える時間も与えられました。

野党時代のプロローグと与党になってからの政治家としての第一幕は終わりました。3.11からの二年半の年月は、この国にとっても、私にとっても苦難の日々でした。私自身、全力を尽くしたという思いがある一方で、数多くの後悔や反省が頭に浮かびます。

政治家としての第二幕に向けて全力を尽くしますが、過去の単純な延長線上に次はあ...りません。社会に根を張り、幹を太くして飛躍しない限り、第二幕は開きません。

これまでの私は、政治活動に特化することで結果を出したいと思いが強く、政治以外の領域に踏み込むことには控えてきました。しかし、災害復興に取り組む中で改めて感じたことは、政治の役割は大きいものの、政治だけでやれることは限られているということです。この国と地域社会を良くしていくために、永田町以外の活動領域を広げたいと思っています。

第一に福島です。福島こそ、私の政治家としての最大の使命です。間もなく、NPO法人「みらいふくしま」が立ち上がります。日本中、世界中の人に福島に行き、福島のものを食べ、福島の今を知ってもらいたい。特に、福島の子供たちに元気になってもらいたい。

3.11以降、福島で頑張っている皆さん、福島のために行動している全国の人たちと数多く知り合いました。これから、彼らと一緒に行動を起こしていきます。福島が元気なること、そしてそのメッセージが国内外に発信されることが、わが国の未来を切り開くことにもつながるはずです。

第二に若者、特に10代の若者と一緒に活動していきたい。中高生の時、選挙カーが大音量で「お父さん、お母さんによろしくお伝え下さい」と過ぎ去っていく姿を見て、有権者しか見ていない政治家に幻滅しました。政治家になってから中高生のディベートスクールを開いたり、街頭演説で中高生に語りかけたりしてきましたが、気が付くと、彼らとの年齢の開きが出て接点が少なくなっていました。

参議院選挙後、社会に対して強い関心を持ち、行動している若者が数多く存在することに気がつきました。その姿は、95年の阪神淡路大震災の時に行動を起こした我々世代と重なり合う部分があります。若者の社会に対する無関心を嘆く向きがありますが、現実には真摯に社会に向き合っている若者のすそ野は広がっているのではないかと感じています。すでに社会を変える行動を起こし、有権者しか見ていない政治家に厳しい視線を向けている10代の若者にも出会いました。我々大人が彼らから学ぶべきものが数多くあるのではないかと思います。

政治家として「未来への責任」を果たすために、国の財政や借金、環境エネルギーなど、若者に語りかけ、若者の声を聞きたいと思っています。また、地域社会の姿や日本の進むべき方向性について、彼らと議論していきたいと思っています。若者の声を聞くために、時間の許す限り、全国どこへでも足を運ぶつもりです。

今日は私の42歳の誕生日。第二幕に向けて出発の日にしたいと思います。
 
※この写真は今年の5月19日に福島で田植えをした時の写真です。

幹事長職の辞表を提出 参議院選挙敗北の責任

2013-07-22 23:42:29 | 国会活動

本日、海江田代表に幹事長職の辞表を提出しました。

今回の参議院選挙で、民主党は歴史的敗北を喫しました。幹事長は選挙の責任者です。特に、東京選挙区での敗北は、候補者を一本化した私に全ての責任があります。多くの方から温かい励ましを頂きましたが、辞意は変わりません。

「共に生きる社会」を綱領に掲げた民主党はこれからも必要です。その一員として、今後とも努力していきたいと思っています。


選挙戦最終日 参議院選挙の終焉

2013-07-20 23:55:00 | 国会活動
17日間の選挙戦が終わろうとしています。

この選挙期間中、演説した回数は106回。全国各地で有権者の皆さんに政策を訴えることができました。47都道府県全てを訪れることはできませんでしたが、解禁されたネット選挙のおかげで、直接お会いしていない方に対してもウェブサイトやSNSを通じて民主党の考えを訴え、また皆さんの声をうかがうことができました。

「未来への責任」を果たすため、民主党の存在意義や民主党が目指す社会のあり方について訴えました。様々な意見、厳しい意見も頂戴致しましたが、「頑張れ」と力を頂くことの方が多く、厳しい選挙の中でも、とても励みとなりました。限られた日数ではありましたが、今私たちが持てる力、全てを出しきったと思っています。
...
明日はいよいよ投票日です。選挙の主役は政治家ではありません。国民の皆さん一人ひとりが主役です。ぜひわずかな時間をつくり、投票所に足をお運び下さい。皆さんが自らの思いを投票して頂くことで、民意が政治に反映される。それが民主主義です。

国会議員は全国民を代表したもの。投票する権利をお持ちの方々は、まだ選挙権を持っていない若い世代、これから生まれくる命、そういった将来の有権者も代表して、一票を投じて下さい。私達には「未来への責任」を果たす必要があります。

選挙戦を終えるにあたり、選挙を支えてくれた多くの人々にも感謝したいと思います。民主党のために必死で活動して頂いた都道府県連、党本部のスタッフ、力強い支援を頂いた関係諸団体の方々、地方議員の皆さん、そして多くの議員スタッフ、本当にありがとうございました。皆さんなしではこの選挙は成り立たちませんでした。

明日の天気は全国的に晴れまたは曇り。投票という審判を待ちます

※この写真は今年の5月19日に福島で田植えをした時の写真です
 

参院選の争点

2013-07-20 19:06:43 | 国会活動
明日、7月21日は投票日。最終局面で浮上してきた参議院選挙の争点を私になりに整理してみました。民主が議席を争っている自民、公明、維新、みんな、共産、生活に限定して明確になっている範囲で書きます

(1)消費増税賛成(民、自、公)、反対(み、共、生)。
税率を上げずに済むならそうしたいですが、問題は「未来への責任」です。維新は消費税を地方にということのようですが、国が担っている社会保障の財源をどうするかは不明。仮に補助金や地方交付税の交付をやめて、消費税を地方の財源にあてるということなら、財政力のない自治体はもちません。

(2)年金制度など社会保障制度の抜本改革が必要(民)、現制度の改善策でよい(自、公)。
民主党の社会保障制度改革は、http://download.dpj-voice.jp/manifesto2013.pdf をご覧ください。なお、社会保障制度改革の議論は消費増税を前提になされていますので、(1)と(2)はセットです。他党についてはスタンスがばらついていて判定できません。

(3)限定正社員などの労働規制緩和に賛成(自、公、維、み)、反対(民、共、生)。
限定正社員の問題点は、http://blog.goo.ne.jp/mhrgh2005/d/20130715 をご覧ください。均等労働均等待遇の制度を整えるのが民主党の考え方です。

(4)憲法96条改正に賛成(自、維、み)、反対(民、公、共、生)。

(5)原発ゼロを目指す(民、公、維、み、共、生)、原発維持(自)。
この二つは改めて説明は不要でしょう。

選挙戦を通じて経済政策に注目が集まりましたが、(1)から(5)はいずれも重要な争点です。すべての点で自民党に賛成、すなわち、消費増税には賛成だが、社会保障制度の抜本改革は必要ないと考え、限定正社員に賛成で、憲法96条改正に賛成で、原発を維持すべきと考える方は、ねじれ解消がベストでしょう。しかし、そういう方は少ないはずです。憲法96条と原発維持にのみ疑問を持っている方は、ねじれを解消しても公明党がブレーキ役になると考えることもできますが、自民が衆参で圧倒的多数を持てばブレーキが利くとは限りません。

一つでも自民党の考えに賛成できないことのある方は、ブレーキの必要性に目を向けて頂きたい。経済政策で自民党を支持している方も、すべての政策を自民党が無条件で実現することを支持しているわけではないでしょう。民主党は自民党のすべての政策に反対しているわけではありません。自民党が暴走する時はブレーキを踏み、政策を提案するのが私たち民主党です。今年の通常国会では84%の法律が成立しました。この数字は、昨年の民主党政権の数字(57.5%)を大きく上回ります。

ねじれの解消で、すべての問題が解決するわけではありません。そして、それはあまりに危険が大きい。国民の皆さん、民主党に力を与えて下さい。

ネット選挙解禁 どうあるべきかを考える

2013-07-19 00:01:33 | 国会活動
今回の参議院選挙では、初めてのネット選挙を経験しています。今までの選挙とは違い、ネットでの発信についても力を注ぐ必要があります。選挙運動のボリュームが増え、嬉しい悲鳴をあげております。

ネット選挙によるプラスの側面は確実にありました。現地で直接意見を頂くことに加えて、ソーシャルメディアを活用することで、今までなかなかお会いできなかった方からも、直接意見を頂くことができました。演説会をネットで中継することで、現地以外の場所から参加することもできるようになりました。民主主義の基本である「意見を聞く」機会が格段に増えたのは事実だと思います。
 
その一方で、マイナス面も浮かび上がってきました。7月4日の公示後、個人や組織に対する意図的な誹謗中傷が目立つようになってきたのです。フェイスブックは実名が基本ということですが、個人を特定できないものや、偽名を使ったアカウントが紛れていることも事実です。

ネット上で活発に議論されることは大歓迎ですが、現状は違うようです。普段の人間関係では、面と向かっては発言できないような言葉も散見されます。批判や異論は歓迎します。しかし、ソーシャルメディア上とはいえ、一つの社会であるはずです。お互いが、一定の礼儀をわきまえた発言を心がけるべきだと思います。その点は非常に残念です。

選挙後に改めて、「ネット選挙とは何だったのか」を総括し、公正なネット選挙を実現するための仕組みを検討していくべきではないかと感じております。

もちろん、多くの参考にすべきご意見もいただいております。移動中には、スマートフォンで皆さんのご意見を見させていただいております。引き続き、フェイスブック上で皆さんと交流させて頂ければと考えております。

限定正社員 社会保障制度改革の必要性を訴える

2013-07-15 23:56:07 | 国会活動

安倍政権が導入に意欲を燃やす限定正社員。

ワーク・ライフ・バランスや能力の向上、雇用ニーズの多様化、産業構造の変化に伴う雇用の流動化などが導入の理由にあげられていますが、背景には人件費をコストと捉える考え方があります。企業にとってはその通り かもしれませんが、働く側から考えたら、たまったものではありません。それぞれの人には生活があり、家族があります。そちらから考えた場合、限定正社員の導入は望ましいことではありません。私は以下の理由から限定正社員の導入には賛成できません。

第一に、正社員よりも首が切りやすい不安定な雇用を増加させます。わが国では、非正規雇用の広がりに加えて、若年層を使い捨てするブラック企業の登場など、雇用環境は悪くなっています。さらに、労働規制を緩和することは、その動きを加速させる可能性があります。

第二に、インフレ下で給与が下がるという最悪の事態を招く可能性があります。安倍総理はデフレを克服し、2%の物価上昇を掲げています。給与の引き上げが必要な時に、給与が下がる社員を新たにつくるのは矛盾しています。

第三に、職場に正社員、限定正社員、パートや派遣社員という3つの階級が生まれることです。日本人はチームワークを大切にすることでクオリティの高い製品やサービスを生み出してきました。私は、均等労働均等待遇の原則を確立することで、もう一度、職場を一つの社会として機能させるべきだと考えています。子育てを終えた女性の再就職、シニア世代の多様な就労もこの原則に基づいて対応することができると考えます。

非正規雇用2042万人(2012年10月1日)。

雇用者の38.2%を占めるに至っています。この衝撃的な数字は、参議院選挙の争点としても浮上してきています。5年に一度行われている就業構造基本調査によると、5年前の福田政権の時が1889万人、10年前の小泉政権の時が1620万人。この10年で非正規雇用は26%も増えたことになります。背景には、小泉政権の時に行われた労働者派遣法の規制緩和などがあります。

小泉政権の時、景気は回復し企業は利益をあげましたが、勤労者の平均給与は大きく下がりました。非正規を増やすことは個別の企業の行動としては合理的でも、国全体で見ると雇用の劣化は深刻な影響を及ぼします。この10年でみても、低所得の若年層が多くなったことで、非婚化、少子化が加速してきました。数百万人の人が勤めていながら被用者年金にも健康保険組合にも入れないという状況は、社会保障制度の根幹を揺るがしています。

民主党政権では日雇い派遣を禁止するなど、労働規制の強化を行いましたが、非正規雇用の増加は止まっていません。 雇用の流動化には、不安定雇用を増やすのではなくて、転職を目指す人たちを支援する政策で対応すべきです。特に、民主党政権が推進してきた生活援助を受けながら職業訓練を受けられる求職者支援制度の充実は、有効だと思います。

わが国が前提としてきた「正社員を前提とした雇用政策」や「社会保障制度」は、もはや現実的ではなくなっています。やはり、社会保障制度を抜本的に改革するべきです。