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黒沢清『恐怖の対談 映画のもっとこわい話』

2009-11-25 17:00:00 | ノンジャンル
 黒沢清さんの'08年対談集「恐怖の対談 映画のもっとこわい話」を読みました。対談相手と内容については、日本のホラー映画について高橋洋くん&鶴田法男さんと、黒沢作品について精神科医の斎藤環さんと、歴史上のホラー映画について手塚真さんと、映画「回路」をめぐって作家の中原昌也さんと、やはり「回路」をめぐって映画評論家の柳下毅一郎さんと、映画「ハンニバル」をめぐって青山真治氏と、テオ・アンゲロプロス作品に関して本人へのインタビュー(これだけは対談ではありません)、ゴダール映画に関してミュージシャンのサエキけんぞうさんと、リチャード・フライシャー追悼として蓮實重彦先生と、お互いの作品に関して恐怖マンガ家の伊藤潤二さんとです。
 「映画のもっとこわい話」とは異なり、高橋くんが彼本来の分野であるホラー映画について語ってくれているのがうれしく思いました。大学時代、彼のアパートに夜行った時、机の上のスタンドだけがつけられていて部屋が薄暗く、押し入れの中には猟奇的事件を扱った全集があったりして「こんなものを読んでいるんだ」と思ったことが思い出されます。今でも「臨死体験で見た地獄の情景」なんて本を読んでいると知って微笑ましく感じました。また、斎藤環の話から、心霊写真が存在するのが日本だけであることを知り、ゴダールとイーストウッドが同い年であることも黒沢さんの発言から気付きました。
 一気に読めてしまい、様々な映画を見る欲望を刺激される本です。映画好きの方にはオススメです。

フランシス・フォード・コッポラ監督『コッポラの胡蝶の夢』

2009-11-24 18:15:00 | ノンジャンル
 WOWOWで、フランシス・フォード・コッポラ製作・脚色・監督の'07年作品「コッポラの胡蝶の夢」を見ました。
 70才を越えてなお、言語の発生を研究するも絶望し'38年のブカレストの町を訪れたドミニクは雷に打たれたショックで30代に若返り、分身も現れますが、高圧電流で人体に突然変異を起こす研究をしているナチのルードルフ博士に拉致されそうになり、スイスに亡命します。彼は自分の体験を本に書いて銀行の貸し金庫に保管し、やがて本を手にするだけで知識を得ることができるようになり、予知能力を使ってルーレットで金を稼ぎます。名前を変えて現れたルードルフ博士を念力で撃退し、戦後になると21世紀になれば解読されるであろう独自の言語で知り得た世界の真理を書き残します。そんな時以前に別れた恋人と瓜二つのヴェロニカと出会いますが、彼女も雷に打たれ1600年前にインドの洞窟に閉じ込められた少女・ルピニの人格に入れ替わります。実際にそのインドの洞窟へ彼女を連れていくことによって彼女は元の人格を取り戻し、恋に落ちた二人はマルタへ旅立ちますが、ヴェロニカは時間を遡るルピニの人格に悩まされ、やがて急速な老化が始まり、それを止めるためにドミニクは彼女の元を去ります。69年、久しぶりにブカレストを訪れたドミニクは、分身から若返ったヴェロニカの写真を見せられますが、核戦争を肯定する分身を殺し、懐かしのカフェを訪れると、年老いた昔の友人たちと出会い、彼らと話しているうちに彼も急に老人となり、歯が抜ける痛みからカフェを出ると、翌朝行き倒れているのでした。
 かなり実験的な映画ですが、画面の色の美しさには息を飲みました。主人公を演じたティム・ロスがあまり魅力的でないのが惜しまれます。ちょっと変わった映画を見たい方にはオススメです。

百田尚樹『永遠の0(ゼロ)』

2009-11-23 14:04:00 | ノンジャンル
 百田尚樹さんの'06年作品「永遠のゼロ」を読みました。
 フリーターのぼくは、フリーライターの姉から、特攻隊で死んだ祖父のことを知っている人を探し出して一緒にインタビューするバイトを与えられます。最初に会った、当時の同僚からは、祖父が憶病者で戦闘から逃げ回っていたと聞かされますが、次に会った同僚は、操縦技術は一流で、階級が下の者にも敬語を使っていて、妻のためにも死にたくないと語っていたと話します。元部下は、危険を回避するための見事な撃墜技術を持っていたと言い、戦い続けるためには生き延びろと言われたことが印象的であったと語ります。別の元部下は、祖父が並外れた鍛練を日頃から行い、娘に会うまでは死ねないと言い、またお前も死なない努力をしろと言われたと語ります。腕のたつ相手と遭遇し、その相手がパラシュートで落下している時に銃撃した時には、もしこの男を生かしていたらこれから先また何人もの同志が殺されるかもしれないからだと述べたとも言い、その後助かったこの米兵は戦場なのだからパラシュート降下中でも撃つのは当たり前だといい、祖父の操縦技術をほめ、彼が死んだことを聞くと涙を流します。元整備士は、祖父が目指していたプロの棋士を生活のために諦めて入隊したこと、妻のヌード写真を持って死んだ米兵を写真とともにきちんと葬ってやったことなどを語ります。祖父の助言から戦争の休暇中に両思いの幼馴染みと結婚したと言う元同僚も出てきます。また、祖父に飛行技術を教わった元特攻要員は、沖縄戦の後半は志願がなくとも通常の命令で特攻させたと証言します。別の元特攻要員は、無慈悲な上官から教え子らを守り、命に換えて祖父を敵から守ろうとした教え子までいたと言います。祖父をライバル視し、祖父の出撃の時を目撃したという元やくざは、その時の祖父の目は死を覚悟したものではなかったと証言します。そして元通信員の話から、出撃の際、祖父が自分から旧式の機を選び、新式の機を譲ってもらった部下はエンジントラブルで不時着して助かったのだと言い、ぼくが見たその部下の名前は祖母が再婚した現在の祖父なのでした。そして現在の祖父は真実を語ります。おそらく祖父はエンジンの不調が音で分かり、一度はためらったものの、結局以前に命を救ってもらった教え子であった現在の祖父にその機を譲ったこと、その操縦席には万が一助かったら自分の妻子をよろしく頼むと書かれていた紙が残されていたこと、戦後3年かかって探し当てた祖父の妻の面倒を現在の祖父が見るようになったこと、そして妻の生活が軌道に乗ってきた時、妻が本当に夫への罪滅ぼしだけのために面倒を見てくれているのかと尋ね、それに対し、現在の祖父は自分は汚い気持ちの持ち主であると言って泣いたこと、それに対し、妻は、祖父が休暇で帰って来た時、自分は絶対に生きて戻ってくる、もし死んだとしても生まれ変わって戻ってくると言って戦場に戻っていったこと、現在の祖父が祖父からもらった外套を着て現れた時、夫が生まれ変わって戻ってきてくれたと思ったのだということを妻が語り、二人は泣いたこと、祖母が死ぬ間際に「ありがとう」と言った時、現在の祖父は祖父が戦闘服姿でベッドの脇に立っていたのを見たこと。そして現在の祖父が「ありがとう」はその祖父に言われたのだと思うというのに対して、ぼくと姉は祖母は現在の祖父を愛していたと反論するのでした。ぼくは祖父の話を知って一時あきらめていた司法試験にまた挑戦することにし、姉も幼い頃からかわいがってくれ現在は貧しい工場を経営している男性との結婚を決意するのでした。そして最後、祖父の最後の姿が描かれます。海面すれすれに長時間飛行してレーダーを逃れ、被弾すると急上昇して背面から急降下して空母に体当たりしますが爆弾は不発。しかし空母の艦長はその飛行技術に敬意を現し、手厚く弔うのでした。
 大平洋戦争時の海軍の士官らの無能ぶりには驚かされ、ミッドウェイ以降も何度も勝機がありながらそれを逃していたことを初めて知りました。しかし、この小説の優れているところは、構成もさることながら、やはりそのエモーショナルな部分でしょう。助かった米兵が祖父の死を悼むところでは胸が熱くなり、最後の現在の祖父と祖母とのやりとりの場面では涙しました。以前に読んだ「ボックス!」に負けずとも劣らない出来だと思います。文句無しにオススメです。


フリッツ・ラング監督『飾窓の女』

2009-11-22 12:18:00 | ノンジャンル
 WOWOWで、フリッツ・ラング監督の'44年作品「飾窓の女」を見ました。
 家族が旅行に出て1人になった大学教授のリチャード・ウォンリー(エドワード・G・ロビンソン)は、いつもの仲間と飲んだ後1人残って本を読み始めます。給仕に時間を知らされた彼が店を出て、隣の画廊の窓に飾ってある女性の肖像画に見とれていると、その絵のモデルであるアリス・リード(ジョーン・ベネット)が現れ、自分がモデルのスケッチを見たければと部屋に誘います。そこで誘われるままに酒を飲んでいると男が現れ、リチャードの姿を見て激怒し、彼の首を絞めます。アリスから渡されたハサミを思わず男の背中に何回も刺して殺したリチャードは、一旦は警察に電話しようとしますが実際に起きたことを警察が信用するはずがないと考え、自分の車で死体を郊外に捨て、それ以降二人は一切会わないようにすることにします。家を出ようとする時に他の住人に目撃され、料金所でも顔を見られそうになり、交差点では白バイ警官に見られ、森の中で死体を捨てる際には有刺鉄線に服を引っ掛けてケガをし、車に戻ると男の帽子を捨て忘れたことに気付きますが、別の車が近づいてきたので急いで車を出したところ、タイヤ跡が泥の上にくっきりと残ってしまいます。翌日、友人の検事に財界人のクロード・マドードが行方不明になっていることを知らされ、やがて死体が発見されます。検事はタイヤ跡から車が、足跡から犯人の身長、体重、歩幅が、有刺鉄線に残された布切れから血液型が分かったと言い、まもなく事件は解決されるだろうと語ると、リチャードは気分が悪くなり、友人の医師から飲み過ぎると心臓発作を起こす強い睡眠薬を処方されます。すると検事は被害者が度々トラブルを起こしていたため彼を尾行していた男も行方不明になっていると言い、翌日の現場検証にリチャードを誘います。現場に向かう車の中で漆かぶれを起こしている右手のケガのことを刑事に指摘されたリチャードは何とかごまかしますが、現場には実際漆の木があり、また現場への道を無意識に先導してしまったりもします。被害者と関わりのある女も現場に連れて来られていて、リチャードは車に戻り遠くから眺めますが、顔は確認できず、帰りの車の中で検事はあの女は被害者の女ではないと言います。家に帰るとすぐにアリスから電話があり、リチャードの昇進の記事を見てもう安心だと語りますが、その電話が終わった直後に被害者を尾行していた男がアリスを訪ね、警察に黙っていてほしければ金を用意しろと言います。アリスはリチャードにすぐに相談しますが、リチャードは彼を睡眠薬で殺すように彼女に言います。翌日訪ねて来た男にアリスは金を渡し、薬入りの酒を飲まそうとしますが男にばれ、男は追加の金を要求して帰ります。アリスはすぐにリチャードに電話すると、リチャードはすぐには解決策が思い浮かばないと言って電話を切り、もう疲れたと言うと睡眠薬で自殺を図ります。その時、アリスは銃声を聞き、表に出ると、挙動不審者との通報で駆けつけていた警官が、突然発砲してきた男を射殺しており、彼の持ち物から彼が殺人犯であるとの結論を出しているのを聞いて、すぐにリチャードに電話しますが、既に意識が朦朧としている彼は電話に出ることができません。しかししばらくすると彼は給仕に起こされ、サロンで本を読んでいるうちに眠りこんでいたことに気付きます。サロンのクラークの男は殺した財界人で、タクシー係は恐喝の男でした。隣の画廊の絵を見ていると女性がタバコの火を借りに来ますが、リチャードはとんでもないと逃げ出すのでした。
 死体を捨てるまでの前半は素晴らしい出来で、まさに漆黒の黒と、鏡を多様した画面、雨に濡れるガラスの向こうのジョーン・ベネットの姿など見事な画面のオンパレードでした。悪夢のような展開もフリッツ・ラングならではのものでしたが、それに比べて後半は冗長で、特にラストのとってつけたようなハッピーエンドはいただけませんでした。しかし映画好きな方は必見です。文句無しにオススメです。

映画のこわい話 黒沢清対談集

2009-11-21 18:14:00 | ノンジャンル
 今日、秦野ビジターセンターのイベントに行ってきました。ゆっくり山歩きを楽しむというものでしたが、軽石などの下に土の柱ができる土柱というものが存在することを知りました。自然は本当に驚異です。

 さて、'07年に刊行された本「映画のこわい話 黒沢清対談集」を読みました。対談している相手は、青山真治、万田邦敏、高橋洋、周防正行、相米慎二、阪本順治、三池祟史、手塚真、唐十郎、楳図かずお、蓮實重彦各氏です。
 大学時代の知人である高橋くんの対談を読むのを目的に手に入れた本だったのですが、内容は教育で、肩透かしを食った感じでした。大学時代の彼は人を教育することになど何の関心も持たず、ただ自分の興味あることをするために突き進む感じの人だったので、その変貌ぶりに驚きました。あるいは私が当時の彼を誤解していたのかもしれません。一番面白かった対談は万田さんとのもので、万田さんが黒沢さんの映画を次々に適格に批判していくので、黒沢さんが段々腹を立てていく部分はつい笑ってしまいました。それに対し、蓮實先生との対談は、蓮實先生が自分の教え子に対し、そこまで誉めるかという位に褒めちぎる様子にちょっと引きました。この本で言及されている、高橋くんが監督した「ソドムの市」と手塚さんの「ブラックキス」は、その後調べたところどちらもDVDで発売されているようなので見てみようと思います。
 いずれにしても映画好きの方なら、どこかの部分で楽しめるところがあると思う本です。オススメです。