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河野多惠子・山田詠美『文学問答』

2009-11-01 13:29:00 | ノンジャンル
 河野多惠子さんと山田詠美さんの'07年に刊行された対談集「文学問答」を読みました。
 対談の内容は、小説を書くことについて、9・11の数カ月後になされた戦争をめぐる話(夫を戦場に送る当事者としての詠美さんの主張が印象的でした)、谷崎文学のマゾヒズムについて、文壇・文学賞を批判する人々への反論などです。小説に特化した内容には付いていけないものもありましたが、文壇でのエピソードには微笑ましいものが多く楽しく読めました。また最後の往復書簡ではまた詠美さんの家族の温泉旅行の話が書かれていて、河野さんが詠美さんのお父さんを誉めていたと詠美さんがお父さんに伝えたところお父さんが喜んで調子に乗り娘たちにからかわれた翌朝、洗面所で口紅を見つけたお父さんが「おおい、これ誰の?」と尋ねると、すかさず妹が「河野先生のじゃないの?」と返し、詠美さんが畳に引っくり返って笑うという爆笑エピソードが紹介されていました。そして「先人の書いてきたものに敬意を払ってない人はだめだと思うんです。つまり、自分がやっていることが、もうすでに昔に書かれてしまっているという、そういうふうな畏怖がない人には小説を書く資格がないんじゃないか。」との詠美さんの発言からは、小説においても映画とまったく事情が同じであると思いました。この本の中で言及されている本のなかで読んでみたいと思ったものは、詠美さんが絶賛する河野多惠子さんの「秘事」と「みいら採り猟奇譚」、戦争というものをよく描いていると河野さんが言う林京子さんの「長い時間をかけた人間の経験」と大岡昇平さんの「俘慮記」、終戦後に書かれ、やはり戦争というものがよく分かると河野さんが言う林芙美子さんの「浮雲」と石川淳さんの「焼跡のイエス」と阿川弘之さんの「霊三題」と庄野潤三さんの「相客」そしてポール・ギャリコの「ザ・ロンリー」、河野さんが自分の創作活動に大きな影響を受けたという「嵐が丘」とサッカレーの「虚栄の市」、お二人が三島では一番好きという「青の時代」、河野さんが傑作と言う遠藤周作さんの「女の一生」、同じく河野さんが素晴らしいと言う菊池寛さんの「真珠夫人」と「第二の接吻」、河野さんが感心したと言う「村上龍映画小説集」、河野さんがはまったという「幽霊を捕まえようとした科学者たち」です。
 「文学」に興味のない方でも幸せな気持ちになれる本です。本好きの方には特にオススメです。