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車谷長吉『飆風』

2009-11-07 15:17:00 | ノンジャンル
 今日、あつぎ国際大道芸を見てきました。見た中では、「ちゅうサン」と「to R mansion」が面白かったです。来年も楽しみです。

 さて、本「顰蹙文学カフェ」の中で山田詠美さんが精神病院に入院した友人に持っていってあげたと言っていた車谷長吉さんの「飆風(ひょうふう)」を読みました。中編「飆風」と短編二つ、講演記録一つが収められた本です。
 「桃の実1ヶ」は、嫁をもらえない次男と引きこもりの長女は重度の心身障害者であった親戚の因縁のせいであると小説家の長男に79才の老女が語る話。
 「密告(たれこみ)」は、高校時代からの友人が付き合っている女性に、それまでの友人の女性関係を密告する手紙を書き、その友人が自殺してしまった話。
 「飆風」は、48才で1つ年上の詩人と結婚した私は既に三島文学賞を受賞していましたが、会社でリストラに会って生活に困窮し、期待していた芥川賞にも2度にわたって落ちると、神経強迫症にかかって幻覚や幻聴、手洗いなどの症状に苦しめられますが、何とか長編第一作「赤目四十七瀧心中未遂」を完成させるという話。
 「私の小説論」は、自分の魂を言葉にして小説を書いていると語る、'03年11月上智大ソフィア祭で行われた講演記録です。
 この中ではやはり「飆風」のインパクトがずぬけて強いものでした。妻・高橋順子の詩も場面に応じて添えられていて、その詩の中で「発狂」という言葉が発せられるのですが、「それが私の病いだ」と神経強迫症の症状を列挙していく部分の迫力はすさまじいものでした。「赤目」を読んだ時も感じましたが、「飆風」には島尾敏雄さんが鬱状態の時に書いた文章に似た感触を覚えました。暗い情念の中にも生命への強い願望が息づいていると言った感じでしょうか。また、登場する精神科の医師の言葉で、普通の人は物事をごく狭い常識の範囲内で判断して暮らしているのに対し、精神疾患の人はその浅い範囲から外へはみ出した人というだけのものであって、人間は程度の差こそあれ誰もが精神疾患の人であり、自覚がある人だけが病院を訪れる、という言葉も心に沁みました。精神疾患に興味のある方には特にオススメです。