また昨日の続きです。
さようなら 勇気ある同志たち
さようなら スアッソズ・レーン
さようならノース・プリマス さようならボストン・ハーバー
もう君たちには会えない
もしこんなことが起きなかったら、私たちは人生を全うしたかもしれない
私たちをさげすむ者たちと言葉を交わしながら
一人きりで 何の跡も残さず 知られもせず 死んだかもしれない
何度も失敗を 挫折を重ねて
けれどこの死は この痛みは 無駄にはならない
そしてあなたたちの罪は 決して霞みはしない
よくも思えるものだ 崖っぷちに立っているのに
自分たちはいつまでもこの世界を支配するのだなどと
私たちは信じる 自由のために戦わねば
自由を得る前に人は
恐怖と強欲から自由になる
そして足枷(かせ)と鎖からも自由に
死に向かうこの廊下を 私たちは歩いていく
これまでも多くの人が歩いた廊下を
けれど私たちは 労働階級の戦いを続ける
あと千回 人生を生きようとも
さようなら 勇気ある同志たち
さようなら スアッソズ・レーン
さようならノース・プリマス さようならボストン・ハーバー
もう君たちには会えない」
次は『マイケル・ドワイヤーの逃走』という詩の説明から。
「1798年のアイルランド反乱が鎮圧されたあとも、マイケル・ドワイヤーとその部下たちはイギリス兵に対しゲリラ戦を続けた。彼らの勇気、忍耐、騎士道的精神は、ウィックロー州のグレン・オブ・イマール近辺の山村の人びとにいまも記憶されている。有名な逃走は数多いが、この1799年の凍てつく冬の逃走はもっともよく知られている。相棒のサム・マカリスターの、負傷して戦いを続けられなくなったあとの英雄的ふるまいも歌に盛り込んである。」
そして実際の詩は次の通り。
「わが名はマイケル・ドワイヤー 隠しはしない
西ウィックローの山の中で生まれた
近年 ‘98年の仲間たちとともに戦った
エニスコーシーを強襲したが
反乱は鎮圧され 僕たちはすぐに悟った
もはや自分の家には住めない
でも あちこちのさみしい洞窟が それなりの安楽を与えてくれた
それに このへんの山々の民は 僕たちをよく知っている
雪が降りしきり 夜はすっかり更けていた
と 安全な家が三軒見えて
難しい天候なのに 見張りがそばに置かれた
こんな晩は 危険もなさそうだった
が 誰か陰険なスパイが ご主人のもとへこそこそ飛んでいった
いつの日か 奴に仕返しできる日が来ますように
目が覚めたら 冗談どころじゃなかった
玄関に ハイランドの兵士が百人
出てこい反乱分子ども 隊長は叫んだ
お前らに勝ち目はない
さっさと降参しろ 命は保証してやる
弾も縄も被らずに済むぞ
するとドワイヤーは部下たちに言う 諸君 またこうなった
だが今回はどうやら否定しようがない
この場所を 外にいる兵隊どもから守るには
神の恩寵だけじゃない
家に火が点けられ マカリスターとドワイヤーは
炎に包まれて死ぬ気だった
火薬と煙とで かれらはほぼ打ち負かされた
ハイランドゲームくたばれ と悪態をつきながら
厩(うまや)の壁のかげから 狙いすましたマスケット銃の弾が
マカリスターに 隠しようのない痛みを与え
自分の銃も吹き飛ばれ マカリスターは呆然と見下ろす
役立たずに垂れた自分の腕を
マカリスターは言う ドワイヤー俺はもう駄目だ 君の銃をくれ
見てみようじゃないか 君がどれだけ跳べるか
扉を開けたマカリスター 一声大きく吠えた
俺は国のために死ぬ
一斉射撃の音が轟き ドワイヤーが跳び出す
哀れサムは銃弾を一身に受けた
ああ 心優しく 勇敢なマカリスター
マイケル・ドワイヤーのために命を捨てたのだ
敵が弾を込め直すずっと前に ドワイヤーはすでに道を半分行っている
キルト姿のスコットランド人が一人 そのかかとに飛びつく
兵たちは銃撃を止め 成り行きを見守る
彼らが見るなか ドワイヤーは相手を倒し
ズボンもなく上着もなく 野生の山羊のように走る
裸足の足からは 間違いなく血が出ている
ブラック・バンクス峠を越えながら 心からの感謝を捧げ
グレンマルアーの洞穴に無事たどり着いた
俺たちはその日三人を失ったが 隊長は逃げた
ほかの連中はその場で降伏した
うち三人は ああ ボルティングラスで首を吊られ
残りは銃殺隊の前に立ち 逝った
ドワイヤーは ダブリンに行きつき
そこから船で ニューサウスウェールズに旅立った
ウィックロー州から遠く離れて」
(また明日へ続きます……)
さようなら 勇気ある同志たち
さようなら スアッソズ・レーン
さようならノース・プリマス さようならボストン・ハーバー
もう君たちには会えない
もしこんなことが起きなかったら、私たちは人生を全うしたかもしれない
私たちをさげすむ者たちと言葉を交わしながら
一人きりで 何の跡も残さず 知られもせず 死んだかもしれない
何度も失敗を 挫折を重ねて
けれどこの死は この痛みは 無駄にはならない
そしてあなたたちの罪は 決して霞みはしない
よくも思えるものだ 崖っぷちに立っているのに
自分たちはいつまでもこの世界を支配するのだなどと
私たちは信じる 自由のために戦わねば
自由を得る前に人は
恐怖と強欲から自由になる
そして足枷(かせ)と鎖からも自由に
死に向かうこの廊下を 私たちは歩いていく
これまでも多くの人が歩いた廊下を
けれど私たちは 労働階級の戦いを続ける
あと千回 人生を生きようとも
さようなら 勇気ある同志たち
さようなら スアッソズ・レーン
さようならノース・プリマス さようならボストン・ハーバー
もう君たちには会えない」
次は『マイケル・ドワイヤーの逃走』という詩の説明から。
「1798年のアイルランド反乱が鎮圧されたあとも、マイケル・ドワイヤーとその部下たちはイギリス兵に対しゲリラ戦を続けた。彼らの勇気、忍耐、騎士道的精神は、ウィックロー州のグレン・オブ・イマール近辺の山村の人びとにいまも記憶されている。有名な逃走は数多いが、この1799年の凍てつく冬の逃走はもっともよく知られている。相棒のサム・マカリスターの、負傷して戦いを続けられなくなったあとの英雄的ふるまいも歌に盛り込んである。」
そして実際の詩は次の通り。
「わが名はマイケル・ドワイヤー 隠しはしない
西ウィックローの山の中で生まれた
近年 ‘98年の仲間たちとともに戦った
エニスコーシーを強襲したが
反乱は鎮圧され 僕たちはすぐに悟った
もはや自分の家には住めない
でも あちこちのさみしい洞窟が それなりの安楽を与えてくれた
それに このへんの山々の民は 僕たちをよく知っている
雪が降りしきり 夜はすっかり更けていた
と 安全な家が三軒見えて
難しい天候なのに 見張りがそばに置かれた
こんな晩は 危険もなさそうだった
が 誰か陰険なスパイが ご主人のもとへこそこそ飛んでいった
いつの日か 奴に仕返しできる日が来ますように
目が覚めたら 冗談どころじゃなかった
玄関に ハイランドの兵士が百人
出てこい反乱分子ども 隊長は叫んだ
お前らに勝ち目はない
さっさと降参しろ 命は保証してやる
弾も縄も被らずに済むぞ
するとドワイヤーは部下たちに言う 諸君 またこうなった
だが今回はどうやら否定しようがない
この場所を 外にいる兵隊どもから守るには
神の恩寵だけじゃない
家に火が点けられ マカリスターとドワイヤーは
炎に包まれて死ぬ気だった
火薬と煙とで かれらはほぼ打ち負かされた
ハイランドゲームくたばれ と悪態をつきながら
厩(うまや)の壁のかげから 狙いすましたマスケット銃の弾が
マカリスターに 隠しようのない痛みを与え
自分の銃も吹き飛ばれ マカリスターは呆然と見下ろす
役立たずに垂れた自分の腕を
マカリスターは言う ドワイヤー俺はもう駄目だ 君の銃をくれ
見てみようじゃないか 君がどれだけ跳べるか
扉を開けたマカリスター 一声大きく吠えた
俺は国のために死ぬ
一斉射撃の音が轟き ドワイヤーが跳び出す
哀れサムは銃弾を一身に受けた
ああ 心優しく 勇敢なマカリスター
マイケル・ドワイヤーのために命を捨てたのだ
敵が弾を込め直すずっと前に ドワイヤーはすでに道を半分行っている
キルト姿のスコットランド人が一人 そのかかとに飛びつく
兵たちは銃撃を止め 成り行きを見守る
彼らが見るなか ドワイヤーは相手を倒し
ズボンもなく上着もなく 野生の山羊のように走る
裸足の足からは 間違いなく血が出ている
ブラック・バンクス峠を越えながら 心からの感謝を捧げ
グレンマルアーの洞穴に無事たどり着いた
俺たちはその日三人を失ったが 隊長は逃げた
ほかの連中はその場で降伏した
うち三人は ああ ボルティングラスで首を吊られ
残りは銃殺隊の前に立ち 逝った
ドワイヤーは ダブリンに行きつき
そこから船で ニューサウスウェールズに旅立った
ウィックロー州から遠く離れて」
(また明日へ続きます……)