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斎藤美奈子さんのコラム・その88&前川喜平さんのコラム・その49

2021-07-10 02:58:00 | ノンジャンル
 先日、神奈川県厚木市にある映画館「kiki」で、『ビリー・アイリッシュ 世界は少しぼやけている』を観ました。2時間30分もある大作で、彼女の曲はほとんどが彼女の兄が作っていること、彼女が好きな歌手はジャスティン・ビーバーであることを知りました。帰宅すると、さっそくグラミー賞の主要な賞をそうなめした彼女のアルバムと、ジャスティン・ビーバーのベスト盤を買ってしまいました。(^^;)

 さて、恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。

 まず6月30日に掲載された「ファッション誌の現実」と題された斎藤さんのコラムを全文転載させていただくと、
「ファッション誌の編集部はいまも憧れの職場なんでしょうか。十八日に最終回を迎えた「リコカツ」も、一~三月に放送された「オー!マイ・ボス! 恋は別冊で」も、主人公はファッション誌の編集者だった。
 ところが、現実社会のファッション誌は受難続きだ。1975年に創刊され、一時は女子大生のバイブルとまでいわれた「JJ」は二月号で月刊を終了。61年創刊の「ミセス」は四月号で六十年の歴史に幕を下ろし、68年創刊の「セブンティーン」も十月号で月刊発売を終える。
 思えば女性誌の凋落(ちょうらく)は「主婦の友」が休刊された2008年頃からはじまっていた。流行の情報源がインスタなどのSNSに取って代わられたこと。年代やライフコース別に読者を区分する戦略が現実的でなくなったこと。ファストファッションが台頭し、若い世代のブランド志向が薄れたこと。原因は多々考えられるけれども、要は生活が逼迫(ひっぱく)し、通信費が比重を増す中、月刊誌に千円近い投資をする余裕はもうないってことだろう。
 致し方ない流れだとも思う半面、雑誌の存在意義は単なるプラットフォームでなく、ひとつの世界観を提示する点にあった。その消滅で読者は分断され、ファッション誌はラブコメの舞台としてのみ生き残る。ああいう華やかなドラマは時代劇と思ったほうがいいかもね。」

また、7月7日に掲載された「作家が見た崩れ」と題された斎藤さんのコラム。
「幸田文『崩れ』は土砂災害が起きるたびに読み返したくなる本だ。
「崩れ」はすなわち日本列島に刻印された山が崩壊した痕跡のこと。齢(よわい)七十二にして文は静岡県・安倍川源流の大谷崩れを偶然目にする。
 〈巨大な崩壊が、正面の山嶺から麓へかけてずっとなだれひろがっていた。なんともショッキングな光景で、あとで思えばそのときの気持は、気を呑まれた、というそれだったと思う〉
 その日から彼女の頭は崩れに支配され、ついには弱った足腰にむち打って日本中の崩れを見に出かけるのである。
 〈すべりは始まって、強く広範囲にわたっておりて来た。山の中だけで止まるか、街でないほうへ行ってくれればいいものを、無慈悲にもずんと町へと来て、道路もなにもかまわず渡って、崖まで達し、ついに崖から川へと押し出し、流水の邪魔をした。お道筋にあったものは、みんな壊れてしまったのである〉
 これは新潟県・松之山町の地滑り現場を描いた箇所。ドローンなどで撮影された熱海市・伊豆山の写真や映像は『崩れ』の文章とそこここで重なる。〈なんと日本中には、崩壊山地が多いことか〉と文は書いている。
 少しだけほっとしたのは熱海市の二軒のホテルが避難者全員を受け入れたという報道だった。雨はまだ続くらしい。被災地の人々にささやかなエールを。」

そして、7月4日に掲載されていた「故人への冒涜」と題された前川さんのコラム。
「赤木氏は明確に記している。「現場として(森友学園を)厚遇した事実はない」 この証言が所謂(いわゆる)『報道しない自由』によって握(にぎ)り潰(つぶ)されています。《秘書アップ》
 故赤木俊夫氏が残した赤木ファイルの一部を都合良く引用した安倍晋三氏のツイートだ。僕は既視感を抱いた。
 「前川次官も含め、誰一人として私から国家戦略特区における獣医学部新設について、何らの指示も受けてない」
 2018年5月14日衆院予算委での安倍氏の答弁だ。確かに直接の指示は受けなかったが、和泉洋人首相補佐官からは「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」と言われた。「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」と書かれた文書もあった。安倍氏が僕の名前を都合良く使ったことは極めて心外だった。
 赤木さん自身は国有地売却に関与していない。「厚遇した事実はない」と書いたのは、信頼する上司の池田靖氏からそう伝えられていたからだ。結果としてそれは赤木さんの誤解だった。
 「夫はこれで三回殺されたんですね」。妻の雅子さんの言葉を、相澤冬樹氏が週刊文春で伝えている。一回目は公文書改竄(かいざん)で死に追い込まれた。二回目は真相解明の再調査を求めて拒否された。そしてこれが三回目。安倍氏のツイートは故人への冒涜(ぼうとく)である。」

 どの文章も読むに値する文章だと思いました。