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まど・みちお『いわずにおれない』その1

2021-07-07 00:19:00 | ノンジャンル
 まど・みちおさんの2005年作品『いわずにおれない』を読みました。まど・みちおさんの詩と彼へのインタビューからなる本です。以下に、いくつか引用をさせていただきます。(「」はまどさんの発言です。)

・童謡も含めると、まどさんがこれまでに発表した詩は2000編を超える。1994年には、児童文学のノーベル賞といわれる国際アンデルセン賞作家賞を日本人として初めて受賞。90代になってからも、年に一冊のペースで新しい詩集を出版している。

・明治、大正、昭和、平成と、一世紀近くを生きてきた詩人の、決して涸れることのない内なる泉から、こんこんとわき出てくる詩。そのほとんどは、ひらがなで書かれた短いものなのに、驚くほどの深さと広がりを秘めている。

・詩人の谷川俊太郎さん、作家の江國香織さん、臨床心理学者の河合隼雄さん、宇宙飛行士の毛利衛さん、そして、まどさんの詩の中から約80編を選んで英訳し、その魅力を海外に伝える手助けをされた美智子皇后……数多くの熱心なファンをもつ96歳の詩人は、こちらが恐縮してしまうほど謙虚だ。

・「私の作品には、そんなふうに生きものがその生きものであることを喜んでるっちゅう詩が一番多いでしょうね。ゾウだけでなく、キリンもクマもウサギもナマコも、なんだって分け隔てなく書いとりますよ。「ぞうさん」が一番ポピュラーになったんで、みなさん、あれが私の代表作だと言ってくださいますけど。」

・「私自身は、「ノミ」という作品がわりあい好きです。〈すばらしいことが/あるもんだ/ノミが/ノミだったとは/ゾウではなかったとは〉っちゅう詩がね。」

・「人間だってそうで、肌の色や髪の色が違うから、いい。同じ日本人でも十人十色、百人百色で、一人ひとり顔や考え方が違ってるし、だからこそ価値がある。お互いに補い合い、助け合うこともできる。」

・「自分が自分であること、自分として生かされていることを、もっともっと喜んでほしい。それは、何にもまして素晴らしいことなんですから。」

・「水に砂糖を溶かせば同じ場所に水と砂糖が存在することになるし、脳細胞にはいろんな記憶が同居していたりするけれど、そういったことを除けば、ひとつのものがあるとき、そこにはほかのものはあり得ない。そういう「ものの存在のしかた」っちゅうものが、すごく美しく荘厳に思えて、その素晴らしさを言わずにおれなくなるのです。」

・「この世の中のありとあらゆるものは、すべてが自分としての形や性質をもっていて、それぞれに尊い。そこにあるだけ、いるだけで祝福されるべきものであり、みんながみんな心ゆくままに存在していいはずなんですよ。」

・「そんなふうにね、96年も生きとっても、今初めて気がついたっちゅうことがいくらでもあるんです。ほとんど毎日のように、新発見に出会いますよ。いつも通っている道、見慣れた景色だと思っても、もうほんとに驚くことばかり。一日として同じじゃあないんですから。」

・「この茎を切り取ると、切り口が丸ではなく四角なんです。それに気づいたときは、ほんとビックリしたなぁ。障子や畳や田んぼのような美しい四角形は人工的なもので、自然の中にはないと思ってましたから。」

・「小さな体でキビキビと一心不乱に働いているアリが、私にはいのちのかたまりのように見えるんですよ。いのちの不思議さ、まぶしさ、激しさを感じるっちゅうのかな。それにゾウなんかと違って、そばに寄ればいっぺんに全部を見ることができる。そういうこともあって、よくアリのことを書くんでしょうね。」

・「私はね、作品にリアリティを出したいっちゅう気持ちが強いんですよ。声やにおいからリアリティを追求する方法もあるけれど、私の場合は視覚的イメージによることが多い。「ミミズ」という詩もそうでした。」

・犬や猫ならまだしも、アリや花の個性の違いなんて、まどさんの詩を読むまで考えたこともなかった。それどころか、ニワゼキショウ、ブナ、カラスアゲハ、フナムシといった名前を知っていればいいほうで、「きれいな花」「大きな木」「チョウチョ」「気持ち悪い虫」と十把一絡(じゅっぱひとから)げにしてしまうことのほうが多い。

・「アリや菜の花と呼ばれているものの存在そのものを感じたいと思うなら、名前にとらわれないほうがいい。だから私は、名前を離れ、自分の五感のすべてを使って、名前の後ろに隠れている、ものそのものの本質に少しでも近づきたいと思っておるんです。」

・「そして(詩作の)最大の理由は、どんな存在も限りなく不思議で複雑だから。この世の中には不思議でないもの、複雑でないものなんてないんですよ。人間は科学っちゅうものを使っていろいろやっとるけれど、限りある人間の能力じゃとても届かんぐらい、すべての存在が複雑精妙で珍しい。人間さまだけが特別ってわけじゃないのは確かです。」

(明日へ続きます……)