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鈴木清順監督『ハイティーンやくざ』その5

2021-07-02 00:18:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

 ダンスクラブ。「次郎ちゃんが帰ってくる時間は?」「あわてることねえよ」「踊り始めてからもう何時間だ?」「1時間半ぐらいかな?」「もうそんなになるかい?」。へなへなと男、座り込む。和子「グッときちゃうな。サツ帰りだろ?」「何やってんだよ」「うるせえ」(中略)。
 バスから降りる次郎。迎えに来ている母。
 商店街の店主らから冷たい目で見られる次郎。
 次郎「(中略)俺が警察に捕まったからか?」。次郎、去る。「次郎! 次郎ったら!」。(中略)
 ダンスクラブ。「お、次郎ちゃん」。笑顔が一瞬で消える次郎。「兄貴―! 兄貴―! お帰んなさい」、母「あんな人と付き合うんじゃない」。「兄貴、おめでとう。みんなで兄貴が戻るのを待ってたんだ。めちゃくちゃ騒ごうぜ。わっしょい。わっしょい」。冷たい母の目。
“野村興業”の看板。「わっしょい。わっしょい」「経営クラブが変わったんだ。ばっちり対抗しようぜ。兄貴」「断る」「どうしてよ?」「断るよ」。去る次郎。「ちぇっ、サツに玉を抜かれやがったな」和子「いかさないなあ」。
 渋い顔で商店街を歩く次郎。後ろから追う母。店に着くと、ステレオもコーヒーメーカーもない。次郎「今は何もない。どうしたんだよ?」「客がさっぱり来なくなったんだよ。次郎ちゃんの事件以来」「そんなバカな。米屋のおやじも逮捕されたが、堂々と商売してるじゃないか。さっきだって偉そうな顔してたんだ。俺と米屋のおやじとどう違うんだよ」「そりゃ母ちゃんだって悔しいよ。でもお米屋さんは有力者だからね」「何言ってやんでえ。母ちゃん、店を開けるんだよ」。次郎、“営業中”の札をドアに掛ける。「店を開けたって、来るお客は決まってるんだよ」「来てくれりゃ一人だってありがたいじゃないか。誰だい?」「誰だっていいじゃないか」「野村か?」「来てくれたって一人や二人じゃ商売にならない」初子「お母さん、清原さんと(中略)飲んできたわ」母「面倒かけますね」「さあ、どうぞおあがりになって」。音楽。「次郎ちゃん、ちょっと来て」「姉ちゃん、何だってそんなにツンツンしてんだよ」。ワイプ。
 清原「今度静岡に転勤することになってね。この機会に店を売って引っ越そうと話してたんです。姉さんも母さんも白い目で見られて肩身の狭い思いをしてるし、店もヤクザの嫌がらせで、この状態だろ? 賛成してくれるかい?」初子「みんな次郎ちゃんのことを思ってやっていることなのよ。どう?」「わかんないよ」「わかんないって何が? 私たち、この町で生活できないのよ。わかんない?」「姉さんこそ静岡に行ったらいいじゃないか」「次郎ちゃん、どうするの?」「残るよ」「そんな強情張らないで、母ちゃんたちと一緒に行っとくれよ」「母ちゃん、俺はこの家にいたいんだよ。ここから動きたくないんだよ」。
 珍来軒、「とんだ災難だったな。まあ町の人はみなわかってはいるんだが、長いものに巻かれろって例えでな」「いや、あのことはもういい。今日はおやじさんに頼みがあって」「何だ?」「俺をここに置いてくんないか?」「う~ん」。招き猫の向きを変える和子。「置くのはいいがな。ここで野村興業と張り合わせちゃ困るな。なにしろこっちは弱え商売だからな」「野村興業と張り合うつもりはない。おやじさんとこで働きたい。出前持ちでも何でもするよ」。
 珍来軒の店主「次郎ちゃん、お前本当にあれから足を洗うつもりかい?」
「ええ? 足を洗う? 町の人はみな俺がヤクザだと誤解してるんだよ」「じゃあ断るよ」「頼むよ。おやじさん。いらっしゃい。いや、いけねえ、いけねえ。お前がうちにいりゃ、学生たちが出入りして、ここが根城になっちまう」「あの子たちとは関係ないよ」「関係ないことはないだろう。兄貴の出所祝いだと言って~を回してよこしたもんなあ。まあ今までのことがあるから、しょうがねえと思ったが、次郎ちゃん、お前本当に知らないのか?」。
 学生の一同、小さな護岸で釣りをしている。次郎、現われる。「タモツ」「兄貴、だいぶ担任にへこまされたらしいな」「お前、俺の名前で~回したらしいな。集めた金を返せよ」(中略)「~なんか回してねえよ」「返せ!」「兄貴、兄貴はきのう断ったんだぜ。俺たちが誘ったのにな。兄貴はパーティの金、誰が出すと思ってたんだい? 俺たちが出すとでも思ったのかい? こいつは~だ」。一同、笑う。次郎、タモツの尻を蹴って川に落とす。「ちきしょう、やりやがったな。次郎、今日から俺が兄貴だ」「兄貴もクソもねえ。俺はヤクザが大嫌いなんだよ」「ふん、勝手にしやがれ」和子「いかしてんじゃない? タモツ。次郎ちゃんの弱虫。私大嫌い」。

(また明日へ続きます……)