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ブレッソン監督の生誕140周年!

2021-07-03 23:07:00 | ノンジャンル
 今年はロベール・ブレッソン監督の生誕140周年に当たります。私の行きつけの神奈川県厚木市の映画館「kiki」では、すでに『少女ムシェット』と『バルタザールどこへ行く』が上映されました。そして近々、『やさしい女』ともう一作も公開されるとのこと。今はあらかじめブレッソンの名前を知って映画を観に来る人は少ないらしいですが、観た後、「観てよかった」と言ってくれるお客さんが多い、とスタッフの方はおっしゃっていました。この際ですから、私もまだ観ていない『湖のランスロ』と『たぶん悪魔が』も上映してほしいものです!!

鈴木清順監督『ハイティーンやくざ』その6

2021-07-03 00:33:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。

 服屋。次郎「こいつが僕の名前で~を回したそうですが、こちらで寄付したんでしょうか?」「~だなんて、体裁のいいことを言うけれどもね、あれは恐喝だよ。ズラーッと10人も並ばれたんだ。客も入ってこないよ」「すいません。いくらやったんです?」「300円。少ないっていうのかね?」「いや、お返ししようと思って。お金です」「あー、いいよ。ただあれっきりにしてもらいたいね」「これ」「何だね?」「借用書です」。(中略)
 お茶屋。店主は次郎と認めただけで、奥に行き、障子を閉める。
 疾走するダンプ。次郎と見つめ合う恵子。
 歩く次郎。小林「次郎」。
 野村興業の事務所。小林「お客さんだ。(芳夫に)ジュースを持って来い」次郎に「おい、入んな」芳夫「嫌です」。
 小林「なあ、次郎。さっきも言った通り、お前一人で行ってもどうしようもないんだよ。見なよ」。破られた借用書。「だ~れもお前のこと信用していない。これが野村興業の看板をしょってみろよ。立派に通用する。お前ほどの腕をほっといちゃ、もったいないから。(中略)ここの身内になりゃ、お前、~だって元通りになるかも知れねえ。えー、どうだい?」芳夫「兄貴。次郎が身内になりゃ、俺、出ていきますよ」「そんなこと言うもんじゃねえ! 困ってる時はお互い助け合うもんだ。お前たち、もともと仲のいいダチだったんだろ? 町の連中はお前を歓迎してくれたかい? 戻ってこねえのかい? 悔しかったら身内になってパンチの一つも食らわせてやるんだ」「考えときましょう」。
 恵子のアップ。「次郎ちゃん、さっきはごめんなさい」。
 川面にかかる雑草。河原の丈のある雑草。草の上に座る次郎と恵子。「僕が野村興業に入れば、よっちゃんは飛び出すって言ってたわよ。次郎ちゃん、(中略)兄さんを助け出すことにならないわ」「幻滅だよ。この町。見たよ。あの目」「どの目?」「町の人の白い目さ」「(上半身を後ろに傾け)ねえ、白い目ってどんな目?」「え?」「こんな目?」。恵子、左上を必死に見る。「じゃあこんな?」。両目で真ん中の上を必死で見る。ほほ笑む次郎。丈のある雑草の中を走り出す次郎。「とにかくたまんないんだよ。おふくろや姉さんが静岡に逃げ出す気持ちが分かるよ。俺も行くよ。こんな町とはおさらばだ。恵子ちゃんともおさらばだ」。次郎に並行して堤の上を走る恵子。「ねえ、次郎ちゃん。町の人たちだって心底から次郎ちゃんを憎んでいるんじゃないと思うの。きっと誤解してるんだわ」「誤解なんてもんじゃないよ。憎んでんだよ」「さっき私がしたような目、してみなさい。ねえ、してみて」「おかしいよ」「お願いだから、やってみて」「おかしいよ」「おかしくないわ、あたし笑わない。じゃあ向こうを向いてるわ」。橋の上から恵子「どう、次郎ちゃん」「目が変になっちゃうよ」「でしょ?」。恵子、満面の笑み。「いつもそんな目をしていられる訳ないわ。誰だって。わかった?」
 母「気をつけてね。運転手さん、よろしくお願いします」。引っ越しのトラック出発。笑顔で菓子を食べている次郎。母「どこ行ってたのよ」「姉ちゃん、行っちゃったね」「お前の帰りがあんまり遅いからね。先に行ってもらったのよ。さ、支度しなさい」「母ちゃんもやっぱり行くのかい?」「一人でがんばったってダメだからね。次郎ちゃんも諦めるんだよ」「ねえ、母ちゃん」「んん?」「こういう目、してみな」「なんだね。そんなことして。今晩中に向こうに着きたいんだよ」「いいからやってみなよ。(中略)笑わないからやってみなよ」「バカバカしい。さあ、行くよ。次郎」。母、電灯を消す。「ねえ、駄々こねないで、母ちゃんと一緒に行ってくれよう。お前どうしても残るって言うのかい?」「母ちゃんを駅まで送って行くわ。母ちゃん、町をきれいにしようっていう俺の気持ちは間違っていなかったんだよ。ただやり方を間違ったんだ。俺は俺一人の力でできると思ってたんだ。俺はここに残って説明して分かってもらうよ。さあ、行こう。おかげで随分いろんなものをなくしちまったなあ。ロビン、学校、芳夫、友達までなくしちゃった」。母、笑顔。「どうしたんだ、母ちゃん」「お前一人でさびしくないかい?」「やだなあ。俺もう18だぜ」「次郎、コーヒー淹れよっか?」「間に合わなくなるよ」。首を振る母。
 母「つらい時には手をつながなくっちゃいけないよ。ね、次郎。手をつないで生きなきゃいけないよ」「ね、母ちゃん」。

(また明日へ続きます……)