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『旅に倦むことなし アンディ・アーヴァインうたの世界』その5

2021-07-19 22:29:00 | ノンジャンル
 そして最後に紹介する詩は『エリンの緑の岸辺』と題された詩です。

「先日の晩 澄みわたるせせらぎの 川べりをそぞろ歩き
サクラソウの寝床に腰かけ いつしか夢に落ちていった
夢のなかで 見たこともない美しさの乙女に会った
乙女は自国の被っている不正にため息をついた エリンの緑の岸辺をさまよいながら

私は急いで美しい女性に近づいていった 美しい人よ お名前を教えてください
あなたは知らないお方 でなければ訊ねはしません
乙女は 身につけている自主と独立の女神の紋章のごとく見えた
紋章を彩るのは シャムロックとバラ エリンの緑の岸辺に花咲く

優しいお方 私は知られざる者です 私の胸の内 あなたにさらします
私はいま 危険のただなかにいて 味方も敵もわかりません
私はダニエル・オコンネルの娘です イングランドから船で戻ってきたばかり
同胞たちを目覚めさせに来たのです エリンの緑の岸辺でうたた寝をする彼らを

あなたはきっと グローニャの真の息子 私の心を明かします
クロンメルの集会に行って 敵を暴露なさい
真の叡智を持っていれば どんな敵もあなたの許に来はしません
自由の明るい星が貧しい者たちを照らすでしょう エリンの緑の岸辺で

嬉しさに有頂天になって目覚めた が ああ ただの夢だった
美しい乙女も消えた もう一度 一目会いたい
天の力よ 彼女を護ってください 私はもう会えないのだから
自由の明るい星が貧しい者たちを照らすまで エリンの緑の岸辺で」

 全体を読んでみて、一番印象に残った詩は、やはり二コラ・サッコとバルトロメオ・ヴァンゼッティの冤罪を歌った詩『椅子を前にして』でした。この世紀の冤罪事件は映画化もされていて、主題歌はジョーン・バエズが歌う『死刑台のメロディ』という邦画名もつけられ、私は幼い頃テレビで観た記憶があります。
 他にも北アイルランドの独立闘争を歌った『マイケル・ドワイヤーの逃走』とか、いかにも牧歌的な『キルデアの平原』も気に入りました。
 普段なら読んでしまった本はヤフオクで売ってしまうのですが、この詩集は常に身近に置いておきたい詩集となりました。私のように普段は詩が苦手な方でも是非手に取ってみてください。