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鴻上尚史『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』その5

2019-03-14 05:48:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。

・「あの当時は非常事態だった、異常の状況だったから、異常の措置を取ったのだ、という言い方で特攻を弁護する人は多いです。(中略)
 それに対して、『つらい真実』の著者、小沢氏は厳しい批判を与えています。
(1) 戦争が異常な状態であることは確かであるが、軍人とはその異常な状況に備えて養成され、一般人を見下すだけの社会的優遇を受けていたのではないか。戦争のプロなのではないのか、勝ち戦さしかプロは考えなかったのか。
(2) 戦況が異常な不利であったこともたしかである。が、そのような状況で、平静に、ムダな被害を減少する方策を把握するのがプロの軍人━━とくに将たるものの存在意義ではないのか、参謀達の役割ではないのか。火事が燃えさかるとき、一般人同様に慌てふためく消防士にプロの資格はない。
(3) ましてや、見通しもなく、一般人に(予備学生と読んでほしい)消火作業を命じ、最も危険な個所に行けというならば、どうであろうか。
(4) 最初の見通しの誤りは仕方ないとも言える。が、効果がなくなっているものを、強行させたことは許せない。それは『異常な』愚かしさである。
(5) 愚行を反省もせず、もちろん謝罪もせず、正当だった、仕方なかった、と戦後まで言いはることは、死者への鎮魂になるであろうか。『異常』への責任回避や責任転嫁は、それをする人(たち)の名誉を守りはしないであろう。
 勝ち戦さの功績は自分(たち)のものとし、悲劇の責任は『異常』と言ってすむなら、軍人くらい気楽な職業は世の中にあるまい」

・「日本人は与えられたものを受け入れる。それが美徳とも思われている。『世間』が機能していた時代は、どんなことを言われたり命令されても『巡り巡ればあなた自身のため』だという信頼があった。
 その記憶が、例えば、私達日本人が『人の頼みを断る時』に感じる苦悩の源泉ではないかと僕は思っています。欧米人の断り方との一番の違いは、相手の申し出やアドバイスを否定したり断ったりする時、日本は原罪にも似た(人によっては微かな、またはとても大きな)痛みを感じることです。欧米人のように、にっこりと微笑みながら、気楽に断ることがなかなかできない理由はこれだと思っているのです。(後略)」

・「2016年9月19日、テレビ朝日の『報道ステーション』を見ていたら、自衛隊の『駆け付け警護』に関するアンケートが自衛隊で行われたと報じられていました。
 南スーダンでの駆け付け警護への参加に対して、「1熱望する 2命令とあらば行く 3行かない」という三択で、3に丸をつけると、個人的に上司に呼ばれて『なんで行けないんだ?』とえんえん問いつめられたと、匿名の自衛隊員は語っていました。そして結局2と答えたと。
 1944年と2016年が一気につながった瞬間でした。

 一気に読める素晴らしい本でした。