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大嶋英敬(ひでたか)『尊い』

2019-03-03 05:33:00 | ノンジャンル
 昨日の新聞にアンドレ・プレヴィンさんの訃報が載っていました。そのあと、おとといにNHKプレミアムで放映された、私が大好きな映画『大空港』のクレジットを見てみると、音楽を担当したのがアルフレッド・ニューマンであることを知りました。そこで彼の名前でググってみると、なんと私が生涯で見た映画のベスト3に入るフリッツ・ラング監督の『暗黒街の弾痕』の音楽も書いているじゃないですか!! 調べてみたら彼の書いた映画音楽はすごいラインアップ! 『荒野の七人』『西部開拓史』などなど、勇ましい音楽を書かせたら右に出るものはいない、といった感じ。それ以外にも『リバティ・バランスを射った男』『慕情』『キリマンジャロの雪』『折れた矢』『荒野の決闘』『哀愁の湖』『わが谷は緑なりき』『海外特派員』『怒りの葡萄』『歴史は夜作られる』『女優ナナ』といったような名作の数々の音楽を書いていたことも初めて知りました。もともと知っていた名前でしたが、今回調べてみて、映画好きな方なら絶対に忘れてはならない名前だと思った次第です。そして1901年3月17日に生まれ、1970年2月17日に亡くなった彼の遺作が『大空港』の音楽なのでした。

 さて、私の友人が先日、新聞の記事を切り取って持って来てくれました。何の賞かは分からないのですが、小学生の部で最優秀賞を取ったと思われる文章です。その全文を転載させていただくと、
「僕が初めてセミの羽化を見たのは小学一年生の夏のキャンプの夜のことだった。
 夜の探検をしていた時、父が『これを見てごらん。』と言って指を指したのは、木によじ登ってじっとしていた、殻をかぶったセミの幼虫だった。
 まだその時は、僕にとって何百匹、何千匹いるセミの一匹でしかなかった。
 『こんなにかたい殻、本当に自分で破れるのかな。』
 『目がついている。』
 『お腹と殻が一本の糸でつながっているよ。』
 『がんばれ、ガンバレ。』
 色々な言葉をかけ続けていた僕は、セミが半分からだを出したあたりからは何も言わず、ただただじっと見ていた。
 セミがからだをすべて出した時、透き通るような背中とうす黄緑色の羽を見て心から感動したのを今でも覚えている。そして一緒に見ていた父のひと言、『尊いね。』という言葉を同じくらいはっきりと覚えている。尊い生命、尊い価値、尊い感動、それらをひっくるめて表現した言葉だったのだろう。僕はその瞬間、きちんとした意味がわからなくても目の前にあるセミの神秘的な姿や時間、生命力が『尊い』に値すると心に刻んだのだと思う。
 セミはおよそ七年もの間、土の中で成長している。やっと地上に出て羽化できたとしても、約一週間から十日程の命だと言われている。しかも羽化は命がけでおこなわれていた。あれから五年、僕は羽化できずに死んでいたセミの幼虫を何匹も見た。穴から出ても木までたどり着けなかったり、羽化の途中で死んだり、羽化してやっと飛び立ったセミが空中で鳥に食べられたりしたのも見た。
 僕はセミを通して命の尊さを知った。今、羽化したあとの殻でさえも尊く感じる。それまでの気持ちとは全くちがう。そしてセミを尊く感じた時から、どんな生き物も植物も一生懸命に生きているんだと感じるようになった。
 『尊い』とは、神聖・きわめて価値が高い・非情に貴重・大切にすべきもの、これらの意味を含んでいる。日常的に使う言葉ではないけれど、自分の感じ方や心のあり方で使える言葉だと思う。僕にとって貴重な経験と忘れられない言葉となった。」

 この文章を読んだ母は、その文章の素晴らしさを認めた後で、この記事を切り抜いて私のところまで持って来てくれた、私の友人のことも激賞していました。「尊い」という言葉、私の好きな作家さん、たとえば川上未映子さんや天童荒太さんが使っていたようにも思います。私も「尊い」という言葉を使えるような人間になれたら、と考えた次第です。