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船戸与一『河畔に標なく』

2008-11-19 15:58:34 | ノンジャンル
 高野秀行さんと西南シルクロードを踏破して書いた、船戸与一さんの'06年作品「河畔に標なく」を読みました。
 日本の元財務相の裏金を持ち逃げし、イワラジ河畔に理想とするホテルを建てようとしている那智信之。カチン独立軍の大尉で、コンシー村の村長兼バプティスト教会の牧師であるゾウ・ラップ。犯罪組織・洪門到公哥老会の一員で、ミャンマーからタイへ売春婦を送り込む仕事をしながら、中国の偽造品を東南アジアの各国へ密輸している張徳仁。サディストで、バモー刑務所の副所長をしているイエ・シュエと、その刑務所に捕えられていて、イエ・シュエから執拗な拷問を受けている、民主化運動の活動家、タン・ニュン。イギリス留学中に知り合ったイエメン人の女性と結婚している、バモー家具商、ルイ・リンらが主な登場人物です。タン・ニュンが脱獄し、張徳仁が秘密裏に商売していたことが組織にばれ、ゾウ・ラップがカチン独立軍の活動の再開を期し、リンの妻の2人の兄が、リンの妻が家族に無断で結婚したことから、リン夫妻を殺しに来ることから、物語は展開し始め、後半はカチンの密林を舞台に話が進んでいきます。
 どのシーンでも何故か登場人物たちは煙草や葉巻きを吸うのが不思議です。構成は練りに練られていて、見事というほかはありませんが、読んでいてとても息苦しく感じました。原因はハードボイルドを目指す余りに、登場人物たちにリアリティが欠落しているからで、行動の動機に対して説得力が欠けています。ただ、それでも前に読んだ「金門島流離譚」よりは随分よくなったとは思いました。
 ハードボイルド小説、探検小説がお好きな方には、オススメです。